【コミカライズ企画進行中】捨てられ聖女は働かないっ!〜追放されたので念願のスローライフはじめます〜
「アルは、すぐ私の事を子ども扱いしたがるけれど、私コレでも立派な成人女性よ? 結婚だってできるし、現に婚約者いたし」
チビで痩せっぽっちだったから、年齢以上に幼く見えてしまうらしいけれど、これでも私は18歳だ。アルは魔族だからきっと私なんかよりずっと長く生きているのだろうけれど、年齢だけで比較したら人はみんな子どもになってしまう。
私の抗議を聞いたアルはがしっと私の肩を両手で掴んで、
「はっ? 婚約者? 待って、シア。あの勇者とそこまで関係進んでるの? 俺聞いてないけど?」
と、なぜかとても動揺した声でそう聞いた。
何でここでノエルが出てくるのかがさっぱり理解できないけれど、そう言えば追放された話はしたけど婚約破棄された話はしていなかったなと思いいたり、経緯を話した。
「……まぁ、そんなわけで王子様は新しい聖女様とご婚約されて、私は自由を手に入れた、と」
その上聖女じゃないという証明書までくれたし、危険なルートでラスティに追放したことから察するに、私が戻って来ないように事故死させる気満々だったのね、きっと。
死を偽装する必要も呼び戻される心配もないし、至れり尽くせりだわとにこやかに笑って話す私とは裏腹に、アルの顔は険しく拳を握りしめている。
「……この国は、どこまで俺の聖女を馬鹿にすれば気が済むのかっ!」
普段穏やかなアルからは想像できないくらい低く冷たい声で、アルはそう怒っていた。
「アル、そんなに怒らなくても。私別に王子好きだったわけでもないし。なんなら数回しか顔合わせてないし」
「良くないっ。第一、シアはなんでそんな奴と婚約なんて」
私はアルを宥めるようにアルの黒髪を撫でる。まぁ、そう思うよねとため息をついて、私はなるべく明るい声を心がける。
「聖女の力って遺伝するんだって。でも、何代先にそれが発現するのかは分からない。だから、王家で聖女の力を独占するために聖女の子が必要なんだってさ。孤児院を人質にとられてたから、私が逃げたら孤児院潰されちゃうかもって。あそこにはまだ、幼い子が沢山いたし、先生に迷惑かけたくなかったし」
王子との婚約は表向き魔王討伐の褒章だけど、ありがたくもなんともないそれを回避する方法があの時の私にはなかった。
婚約してから後もずっと働き詰めで考えることすら面倒で。
聖女としての義務だと言われれば、そうなのだろうとしか思わなかった。今考えればおかしい事だと分かるけれど。
「ふふ、でも今は王子様に本当に感謝してるの。婚約破棄してくれて、追放してくれたおかげで、私はアルに会えたし、今とても楽しい。聖女としてお勤めしてた時と違って、孤児院にも沢山寄付できるしね!」
だからそんなに怒らないで、とアルに笑いかける。
「怒ってくれてありがとう。でも、私笑っているアルの方が好きだわ」
「俺の聖女は慈悲深すぎる」
「そんなことはないんだけど」
以前アルから俺の聖女が笑っていてくれたら充分だと言われたけれど、私は充分だと思えない。
アルを見ているとどんどん欲が出てきてしまう。
アルに笑っていて欲しい。
アルに幸せになって欲しい。
アルに傷ついて欲しくない。
そして、叶うならずっと側にいて欲しい。
それらはまだ口にはできないけれど、心の中でそっと祈る。
せめて、明日もこんな一日が続けられますように、と。
チビで痩せっぽっちだったから、年齢以上に幼く見えてしまうらしいけれど、これでも私は18歳だ。アルは魔族だからきっと私なんかよりずっと長く生きているのだろうけれど、年齢だけで比較したら人はみんな子どもになってしまう。
私の抗議を聞いたアルはがしっと私の肩を両手で掴んで、
「はっ? 婚約者? 待って、シア。あの勇者とそこまで関係進んでるの? 俺聞いてないけど?」
と、なぜかとても動揺した声でそう聞いた。
何でここでノエルが出てくるのかがさっぱり理解できないけれど、そう言えば追放された話はしたけど婚約破棄された話はしていなかったなと思いいたり、経緯を話した。
「……まぁ、そんなわけで王子様は新しい聖女様とご婚約されて、私は自由を手に入れた、と」
その上聖女じゃないという証明書までくれたし、危険なルートでラスティに追放したことから察するに、私が戻って来ないように事故死させる気満々だったのね、きっと。
死を偽装する必要も呼び戻される心配もないし、至れり尽くせりだわとにこやかに笑って話す私とは裏腹に、アルの顔は険しく拳を握りしめている。
「……この国は、どこまで俺の聖女を馬鹿にすれば気が済むのかっ!」
普段穏やかなアルからは想像できないくらい低く冷たい声で、アルはそう怒っていた。
「アル、そんなに怒らなくても。私別に王子好きだったわけでもないし。なんなら数回しか顔合わせてないし」
「良くないっ。第一、シアはなんでそんな奴と婚約なんて」
私はアルを宥めるようにアルの黒髪を撫でる。まぁ、そう思うよねとため息をついて、私はなるべく明るい声を心がける。
「聖女の力って遺伝するんだって。でも、何代先にそれが発現するのかは分からない。だから、王家で聖女の力を独占するために聖女の子が必要なんだってさ。孤児院を人質にとられてたから、私が逃げたら孤児院潰されちゃうかもって。あそこにはまだ、幼い子が沢山いたし、先生に迷惑かけたくなかったし」
王子との婚約は表向き魔王討伐の褒章だけど、ありがたくもなんともないそれを回避する方法があの時の私にはなかった。
婚約してから後もずっと働き詰めで考えることすら面倒で。
聖女としての義務だと言われれば、そうなのだろうとしか思わなかった。今考えればおかしい事だと分かるけれど。
「ふふ、でも今は王子様に本当に感謝してるの。婚約破棄してくれて、追放してくれたおかげで、私はアルに会えたし、今とても楽しい。聖女としてお勤めしてた時と違って、孤児院にも沢山寄付できるしね!」
だからそんなに怒らないで、とアルに笑いかける。
「怒ってくれてありがとう。でも、私笑っているアルの方が好きだわ」
「俺の聖女は慈悲深すぎる」
「そんなことはないんだけど」
以前アルから俺の聖女が笑っていてくれたら充分だと言われたけれど、私は充分だと思えない。
アルを見ているとどんどん欲が出てきてしまう。
アルに笑っていて欲しい。
アルに幸せになって欲しい。
アルに傷ついて欲しくない。
そして、叶うならずっと側にいて欲しい。
それらはまだ口にはできないけれど、心の中でそっと祈る。
せめて、明日もこんな一日が続けられますように、と。