【コミカライズ企画進行中】捨てられ聖女は働かないっ!〜追放されたので念願のスローライフはじめます〜
地鳴りのような低い声とも言えない音を発しながら、それはアルを襲う。
同族殺しや裏切りと言った聞き取れる単語からそれがアルが襲われている原因なのだと推察する。
助けに入りたくても、引かれた線から先、見えない壁に阻まれて近づく事も光魔法を込めた銃弾が届く事もない。
アルの目が紅く光り、消していた魔族の象徴とも言えるツノが出て、耳は尖り人のそれとは違う形に変化していた。
振り払う様に黒いモヤの塊を消し飛ばしながら、アルは肩で息をする。ノエルと対峙していた子どものアルより、アルの魔力が弱く、力を発揮できていないように見える。
(……満月、だから?)
私の聖女の力が一番満ちるのが満月の夜である様に、アルにとって一番力が出ない日が今日ならば、分が悪いと言った意味が理解できる。
「……アルっ!!」
その黒い塊が何なのか私には分からない。だけど明らかに敵意を持ってアルの事を傷つけていく。
切り裂かれた箇所からアルの血が流れる。身体に無数についていた傷痕の原因はコレかと私は初めて知る。
私は私を阻む見えない壁をドンドン叩いてアルの名前を呼ぶ。
アルにまとわりつく黒いモヤがアルの足を引っ掛け、アルは引き倒された。
『コロセ、コロセ、コロセっ!!!!』
どうして、アルが狙われなくてはならないのか、私には分からない。
だけど、私の大切な人が傷つくのは嫌だ。
「……嫌だっ、死なないで」
死なないで、そう呟いた時昔の記憶が不意に蘇った。
こんな事が、かつてあった。なぜかそれ以上思い出せないけれど、でも確かにそれはあったのだ。
(……あの時は、どうしたっけ?)
私は銃を消失させて、手を組み合わせ膝をつく。
「……全部、消えて」
私は目を閉じて、そう祈る。自分の中から、一気に力が溢れていき、目を閉じていても分かるほど辺りが明るくなったのを感じる。
私から力が抜け、光が収まったあとゆっくり目を開けた。
そこにはもう見えない壁はなく、アルを襲っていた黒い塊も全て消え、嫌な気配も無くなっていた。
「アルっ!!」
私は地面に両腕をついて、息をするアルに駆け寄る。
服はところどころ破れていて、血まみれで、いつものアルとは違う姿の彼に抱きつく。
回復魔法を唱えようとした私を遮ってアルは首を振る。
「それ以上、聖女の力は使っちゃダメだよ」
紅く光る瞳で、苦しそうにそう言ったアルは、
「……見ないで」
つぶやくようにそういった。
「こんな姿さらしたら、また俺の聖女に、嫌われて泣かせちゃうな」
咳き込むアルの口から血が漏れる。あの時も彼は私のことをそう呼んだ。『俺の聖女』と。
「怖がらせて、ごめんね。シア」
紅く光る目も、尖った耳も、頭から生えたツノもヒトとは違うそれは、アル本来の姿なのだろう。
『泣かないで、シア。もう、2度と君の前に現れたりしないから』
閉じていた記憶の蓋が少しずつ、ズレる。
「……怖いの、怖いの、魔ノ国まで飛んでいけ」
私は思い出したフレーズをそっと口にする。
「……思い出さないで、欲しかった……な」
つぶやく様にそう言ったアルは、痛むのか顔を顰めた。
「痛いの、痛いの、飛んでいけ」
私はアルの黒髪を撫でてそうつぶやく。
「母に教わったんだと思ってた。でも、私にコレをしてくれていたのは、アルでしょう?」
私のつぶやくような確認に、アルは何も答えず、微笑んだだけだった。
同族殺しや裏切りと言った聞き取れる単語からそれがアルが襲われている原因なのだと推察する。
助けに入りたくても、引かれた線から先、見えない壁に阻まれて近づく事も光魔法を込めた銃弾が届く事もない。
アルの目が紅く光り、消していた魔族の象徴とも言えるツノが出て、耳は尖り人のそれとは違う形に変化していた。
振り払う様に黒いモヤの塊を消し飛ばしながら、アルは肩で息をする。ノエルと対峙していた子どものアルより、アルの魔力が弱く、力を発揮できていないように見える。
(……満月、だから?)
私の聖女の力が一番満ちるのが満月の夜である様に、アルにとって一番力が出ない日が今日ならば、分が悪いと言った意味が理解できる。
「……アルっ!!」
その黒い塊が何なのか私には分からない。だけど明らかに敵意を持ってアルの事を傷つけていく。
切り裂かれた箇所からアルの血が流れる。身体に無数についていた傷痕の原因はコレかと私は初めて知る。
私は私を阻む見えない壁をドンドン叩いてアルの名前を呼ぶ。
アルにまとわりつく黒いモヤがアルの足を引っ掛け、アルは引き倒された。
『コロセ、コロセ、コロセっ!!!!』
どうして、アルが狙われなくてはならないのか、私には分からない。
だけど、私の大切な人が傷つくのは嫌だ。
「……嫌だっ、死なないで」
死なないで、そう呟いた時昔の記憶が不意に蘇った。
こんな事が、かつてあった。なぜかそれ以上思い出せないけれど、でも確かにそれはあったのだ。
(……あの時は、どうしたっけ?)
私は銃を消失させて、手を組み合わせ膝をつく。
「……全部、消えて」
私は目を閉じて、そう祈る。自分の中から、一気に力が溢れていき、目を閉じていても分かるほど辺りが明るくなったのを感じる。
私から力が抜け、光が収まったあとゆっくり目を開けた。
そこにはもう見えない壁はなく、アルを襲っていた黒い塊も全て消え、嫌な気配も無くなっていた。
「アルっ!!」
私は地面に両腕をついて、息をするアルに駆け寄る。
服はところどころ破れていて、血まみれで、いつものアルとは違う姿の彼に抱きつく。
回復魔法を唱えようとした私を遮ってアルは首を振る。
「それ以上、聖女の力は使っちゃダメだよ」
紅く光る瞳で、苦しそうにそう言ったアルは、
「……見ないで」
つぶやくようにそういった。
「こんな姿さらしたら、また俺の聖女に、嫌われて泣かせちゃうな」
咳き込むアルの口から血が漏れる。あの時も彼は私のことをそう呼んだ。『俺の聖女』と。
「怖がらせて、ごめんね。シア」
紅く光る目も、尖った耳も、頭から生えたツノもヒトとは違うそれは、アル本来の姿なのだろう。
『泣かないで、シア。もう、2度と君の前に現れたりしないから』
閉じていた記憶の蓋が少しずつ、ズレる。
「……怖いの、怖いの、魔ノ国まで飛んでいけ」
私は思い出したフレーズをそっと口にする。
「……思い出さないで、欲しかった……な」
つぶやく様にそう言ったアルは、痛むのか顔を顰めた。
「痛いの、痛いの、飛んでいけ」
私はアルの黒髪を撫でてそうつぶやく。
「母に教わったんだと思ってた。でも、私にコレをしてくれていたのは、アルでしょう?」
私のつぶやくような確認に、アルは何も答えず、微笑んだだけだった。