【コミカライズ企画進行中】捨てられ聖女は働かないっ!〜追放されたので念願のスローライフはじめます〜
「それにしてもお嬢がこんなに可憐で可愛いお方だったとは」

「へっ!?」

 可憐も可愛いも言われ慣れていない単語に驚き、アスマをマジマジと見返す。リップサービスなのは分かっているけれど、なんだかこそばゆい。

「お嬢はちっちゃくて、小動物みたいに愛らしいのに、あの強さ。今日の服も似合ってます! 顔立ちの幼さと出るとこ出たギャップで聖女とか響きが、エ」

 全てを言い切る前にアスマは床に沈んでいた。

「シアを邪な目で見るな」

 いつから居たのか分からないくらいの速度で飛んで来て、勢いよく踵落としを決めた犯人はバスケットを抱えたアルだった。

「……アスマ生きてる?」

 アスマの側に駆け寄って助け起こそうとしたところで、アルに止められ上着をかけられる。

「アル、いきなり蹴っちゃダメだって! あとこの上着は暑すぎるわ」

 かけた上着のボタンをきっちり留めようするアルに抗議するが、

「シアは警戒心が足りない。こういうのがいるんだから、露出ダメって言ったでしょ。変な事されてない? あと朝着てた服はどうしたの?」

 めっとキラキラした笑顔でそう言われる。表情としては笑顔を浮かべているが、目が笑っていない。
 そんなアルと私の間にさっきまで私を揶揄って遊んでいたシェイナが割って入り、私を後ろから抱きしめる。

「セリシア様に似合いそうな服を私が見繕って着替えて頂きました。もう私ではデザイン若すぎるので。正直自分で着ていた頃では見られなかった現象に若干涙目ではありますが、どうです? 可愛いでしょ!」

「余計なことをしないでくれるかな? シェイナ。うちの聖女は素直なんで、ギルドマスターに言われたら勧められるまま着ちゃうから」

 私は自分の格好を改めて見てみる。聖女時代に支給されたいつもの作業服ではなく、シェイナから渡された可愛いめのブラウスとショートパンツに、ハイソックスと黒ブーツ。

「セリシア様的にはどうですその格好?」

「可愛い、けど。その、胸のあたりがちょっと苦しくて。アルのごはんが美味しくて太っちゃったのかしら」

 最近食べすぎかしらと反省する私に、

「いえ、正しい位置に矯正しただけなんで大丈夫ですが、やっぱり元の持ち主的には涙目です」

 シェイナはそう苦笑気味にいった。
 でも可愛いっとシェイナは私に抱きついてくる。ちなみに髪もシェイナがいじってくれた私は、本日も多分分かりやすく女の子らしい格好なのだろう。

「あ、そうだ。セリシア様、商談のお時間です。勇者様のご紹介の商会の方が来られたので、会議室へどうぞ」

 私はお礼を言って立ち上がる。

「あ、アルは付いてきちゃ駄目よ。買い付けは私がするんだから」

 と当たり前のようについてこようとしたアルを制し、アスマを連れて会議室に向かって足を運んだ。
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