【コミカライズ企画進行中】捨てられ聖女は働かないっ!〜追放されたので念願のスローライフはじめます〜
「おんやぁーセリシア様。ご本人が良いと言っているのに、セリシア様にそれを止める権利が?」

 私はシェイナの顔をじっと見つめ、シェイナの表情で悟る。
 あぁ本当に、アルがいいと言ったのか。
 それがわかって、私は小さく拳を握る。

「本人が、嫌がってないなら別にいいのよ。私に止める権利なんてあるわけないし」

 別にアルは私の恋人というわけでもないし、ましてや私はご主人などと呼ばれる立場でもない。
 ただ今日の朝までずっと一緒に居たのに、それを知らされていなかったと言うことが、なんとなく胸の奥につっかえて、うまく飲み込めないだけで。

「シア、なんだか落ち込んでるねぇ」

「別に。それより、ラウル様はいつまでラスティにいるつもり?」

 本来、大賢者として王城に仕えている彼はとても忙しい立場のはずだ。それがふらりとこんな最果てまでやってきて、1週間も居着いている。

「シアが話をまともに聞いてくれないから」

 本当は僕だって忙しいんだよとクスっと笑って私の髪を優しく撫でながらそういう。

「聖女としては、もう働かないって言ったでしょ」

 私は何度目になるかわからないこのやりとりをため息交じりに今日も繰り返す。

「シアの力が必要なんだよ。どうしても」

 もちろん、報酬ははずむよ? とラウルはそういうけれど、はっきり言って気が乗らない。

「うーん、しょうがないなぁ」

 全く困っていなさそうな声で、わざとらしくため息をついたラウルは、

「じゃあ、落ち込んでいるシアに僕からプレゼント」

 と言って、とても可愛らしい服が差し出された。

「今、王都で流行らしくて。冷凍庫付き冷凍庫や他の賞品を持ってくるついでに、取り寄せちゃった」

 ちなみにこれ全部と、私の後ろに積み重なっているたくさんの箱を指して、そういった。

「うわぁ、素敵ですねぇ。こんなに沢山貢いでくださる方なんて、そういらっしゃらないですよ〜」

 シェイナは勝手に箱を漁って、コレとか本日の衣装にいかがです? 動きやすそうですよと、ぐいぐい勧めてくる。

「いや、可愛いんだけども。もらう理由ないし、そもそもなんで私のサイズ知ってるの!?」

「今まで可愛げも色気もない作業着を着ていたシアが、可愛い格好に目覚めたって聞いてね。それならば、兄としてはやはり一肌脱ぎたいなと。ちなみに、個人情報なんて金でいくらでも買えるんだよ」

 ちなみに、僕としてはこれがオススメとフリルとレースがふんだんにあしらわれた、令嬢風のドレスが出てきた。
 こんな田舎町では絶対着用する機会がない。そしてラスティでなくても、私の人生でこれを着る機会は多分ない。
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