【コミカライズ企画進行中】捨てられ聖女は働かないっ!〜追放されたので念願のスローライフはじめます〜
28.その聖女、想いビトを語る。
ラウルは私が積み上げた枯毒竜を見ながら、
「ノエルの報告通りだね」
と動かなくなった魔物に近づく。
「解毒魔法かけたから、体液に触れても問題ないと思うけど、なんでこんなところにコレがいるの?」
念の為周辺全部に浄化魔法もかけ、全てを無毒化しながら私はラウルに話しかける。
今までこの周辺に来たことがなかったから、この魔物の存在に私は気づかなかった。
だが、枯毒竜は本来魔ノ国の生き物だ。いくら魔ノ国が近いとはいえ、この周辺で見かける事は無いはずなのに。
「聖女として働かないって言ってた割には、しっかり仕事してくれるね。さすが、シアだ」
私が魔法を唱え終わると、ラウルは私の質問には答えずに、いつもそうやっていたように、私の頭をよしよしと撫でる。
「……約束通り調査には協力する。だから、アルに手を出さないで」
協力しろと仕事の依頼はしても調査目的も詳細も教えてはくれないかと察する。
ラウルの調査自体には興味がないので、返ってこない答えの代わりに、私は再度念を押した。
「……そんなに、あの魔族が大事?」
ラウルは少し寂しそうな目をしながら、私にそう聞く。
「大事よ。私がここで生活できているのは、全部アルのおかげなの」
「じゃあ、なおのこと知りたいと思わないのかい?」
「……知りたいわ。けど、それをアル本人以外から聞くのは違うと思うから」
あの魔族について話したいことがある。
そう切り出したラウルに待ったをかけた私は、ラウルの言う"大事な話"を聞かなかった。
「アルが何者であってもいいの。ただ、ここにいてくれればそれでいい」
それは間違いなく私の本音だった。もし知りたいのなら、多分私は自分自身で思い出さなくてはいけないのだろう。
昔のことを詳細に思い出そうとすると、どうしてもある部分で記憶の蓋が閉じてしまう。
仮にアルが私に何かをした結果、そうなってしまっているのだとしても、それはきっと私に危害を加えるためのものではないと言う事だけはわかる。
『俺は、俺の聖女を傷つけない』
この言葉は、信じられると思うから。
……信じていたいと思うから。
「いいの。これでいいのよ」
いつかアルの手が離れてしまうかもしれない。そんな"いつか"が来るのが私はたまらなく怖い。
だからそうならないように、努力しようと決めた。
「アルが私を傷つけないなら、私もアルを傷つけない。対等でいたいの。難しいかもしれないけれど」
私が人間で、アルが魔族である事は変えられない。それでも、そう願わずにはいられない。
「……魔族は人を喰らうし、蹂躙する。どれだけ想っても、生きる長さだって違う。そんなモノと対等でいたいと?」
「……私は、人間のほうがずっと怖い」
私の言葉に、ラウルは息を飲むのがわかった。
「私たちが出会った魔族は確かに人を喰らうし、人の住処を侵し、略奪をしたかもしれない。でも、それはほんの一部で、すべての魔族がそうではないと思うから」
もし、あれだけ圧倒的な力を持っている魔族全てが、領域侵して魔ノ国から攻めてきたのなら、人間なんてとっくの昔に滅んでいるだろう。
そうなっていないと言う事は、あそこに暮らす大半は、そういうことをしない魔族なのではないかと思う。
「ノエルの報告通りだね」
と動かなくなった魔物に近づく。
「解毒魔法かけたから、体液に触れても問題ないと思うけど、なんでこんなところにコレがいるの?」
念の為周辺全部に浄化魔法もかけ、全てを無毒化しながら私はラウルに話しかける。
今までこの周辺に来たことがなかったから、この魔物の存在に私は気づかなかった。
だが、枯毒竜は本来魔ノ国の生き物だ。いくら魔ノ国が近いとはいえ、この周辺で見かける事は無いはずなのに。
「聖女として働かないって言ってた割には、しっかり仕事してくれるね。さすが、シアだ」
私が魔法を唱え終わると、ラウルは私の質問には答えずに、いつもそうやっていたように、私の頭をよしよしと撫でる。
「……約束通り調査には協力する。だから、アルに手を出さないで」
協力しろと仕事の依頼はしても調査目的も詳細も教えてはくれないかと察する。
ラウルの調査自体には興味がないので、返ってこない答えの代わりに、私は再度念を押した。
「……そんなに、あの魔族が大事?」
ラウルは少し寂しそうな目をしながら、私にそう聞く。
「大事よ。私がここで生活できているのは、全部アルのおかげなの」
「じゃあ、なおのこと知りたいと思わないのかい?」
「……知りたいわ。けど、それをアル本人以外から聞くのは違うと思うから」
あの魔族について話したいことがある。
そう切り出したラウルに待ったをかけた私は、ラウルの言う"大事な話"を聞かなかった。
「アルが何者であってもいいの。ただ、ここにいてくれればそれでいい」
それは間違いなく私の本音だった。もし知りたいのなら、多分私は自分自身で思い出さなくてはいけないのだろう。
昔のことを詳細に思い出そうとすると、どうしてもある部分で記憶の蓋が閉じてしまう。
仮にアルが私に何かをした結果、そうなってしまっているのだとしても、それはきっと私に危害を加えるためのものではないと言う事だけはわかる。
『俺は、俺の聖女を傷つけない』
この言葉は、信じられると思うから。
……信じていたいと思うから。
「いいの。これでいいのよ」
いつかアルの手が離れてしまうかもしれない。そんな"いつか"が来るのが私はたまらなく怖い。
だからそうならないように、努力しようと決めた。
「アルが私を傷つけないなら、私もアルを傷つけない。対等でいたいの。難しいかもしれないけれど」
私が人間で、アルが魔族である事は変えられない。それでも、そう願わずにはいられない。
「……魔族は人を喰らうし、蹂躙する。どれだけ想っても、生きる長さだって違う。そんなモノと対等でいたいと?」
「……私は、人間のほうがずっと怖い」
私の言葉に、ラウルは息を飲むのがわかった。
「私たちが出会った魔族は確かに人を喰らうし、人の住処を侵し、略奪をしたかもしれない。でも、それはほんの一部で、すべての魔族がそうではないと思うから」
もし、あれだけ圧倒的な力を持っている魔族全てが、領域侵して魔ノ国から攻めてきたのなら、人間なんてとっくの昔に滅んでいるだろう。
そうなっていないと言う事は、あそこに暮らす大半は、そういうことをしない魔族なのではないかと思う。