【コミカライズ企画進行中】捨てられ聖女は働かないっ!〜追放されたので念願のスローライフはじめます〜
「魔族に対して、最も強く対抗できる存在が聖女だ。本来、その供給元である瘴気を祓える聖女は魔族にとって、脅威であり天敵のはずだ」
魔族が使う魔力の素を祓い、その存在を弱体化させる聖女の実力は魔王討伐の時にラウル自身の目で確認している。
聖女を前にして、恐れ慄きその足元に跪いた魔族達の姿を。
「なのにアンタは天敵をそばに置き、尚且つ瘴気が祓われたこの土地で今だに魔物を一撃で葬れるほどの魔力を保持して生きている」
先日見たアルの様子はとても弱体化しているようには見えなかった。それどころか数年前に討伐した魔王よりもずっと強い力を持っている。
「アンタ、どれだけ魔力を喰らったんだ? 同族殺しのアルバート・ベルク」
かつて魔ノ国に君臨したその王は、同族殺しとして有名で、その圧倒的な力で魔族を従え、歯向かうものは容赦なく葬ったと聞く。
彼曰く、脆弱な人間を狩るなどつまらない。魔族の方がよほど効率的に魔力を喰らえると言い放ち、彼が魔ノ国を支配していたときは、人間を襲う魔族がいなかった。魔王が脆弱と言い放ち、喰らうことを良しとしなかった人間に手を出した瞬間、王の意思に反したと見なされ、狩られる側に落とされてしまうからだ。
「また、随分古い話を持ってくるね。同族を喰らった魔力なんて、もう一欠片も残ってないよ」
「なら、どうやって」
「シアが来る前までは、確かにこの土地は俺にとってかなり居心地が良かった。濃い瘴気のおかげで魔力生成に事欠く事もなかったし」
シアが毎日浄化し聖柱を立てたため、今では一部を除き空気中から魔素を取り込む事が難しいほど、この土地は澄んでいる。
「けど、魔力の補給方法は他にもある。方法は教えないけど」
アルは風邪で伏せるシアを思い浮かべ、こっそりため息をつく。先日怪我を治してもらったとき、シアから神気を抜きすぎてしまったな、と止められなかった自分を反省する。
やめなければとは思ったが、シアの反応があまりに可愛くて、やり過ぎたなんて善意100%のシアには絶対言えない。
「人を、喰ったのか?」
「喰ってない。第一こんな狭い町で失踪者が出たら大事件だろ。信じる信じないは自由だが、俺は今まで人を喰ったことも狩ったこともない」
魔族の中でも圧倒的強者だったアルにとって、人間など眼中に入れる価値もなかった。
「じゃあ、先代聖女はなぜ死んだ?」
彼女、先代聖女が魔ノ国に乗り込んで来るまでは。
「セイカは……先代聖女が死んだのは、確かに俺のせい……なんだろう、な」
彼女と過ごした日々はとても短く、今でも忘れられないくらい鮮明で。
そして自分の価値観を塗り替えていった突風のようなその人は、自身の宝物を魔族である自分に託してその短い生涯に幕を下ろした。
魔族が使う魔力の素を祓い、その存在を弱体化させる聖女の実力は魔王討伐の時にラウル自身の目で確認している。
聖女を前にして、恐れ慄きその足元に跪いた魔族達の姿を。
「なのにアンタは天敵をそばに置き、尚且つ瘴気が祓われたこの土地で今だに魔物を一撃で葬れるほどの魔力を保持して生きている」
先日見たアルの様子はとても弱体化しているようには見えなかった。それどころか数年前に討伐した魔王よりもずっと強い力を持っている。
「アンタ、どれだけ魔力を喰らったんだ? 同族殺しのアルバート・ベルク」
かつて魔ノ国に君臨したその王は、同族殺しとして有名で、その圧倒的な力で魔族を従え、歯向かうものは容赦なく葬ったと聞く。
彼曰く、脆弱な人間を狩るなどつまらない。魔族の方がよほど効率的に魔力を喰らえると言い放ち、彼が魔ノ国を支配していたときは、人間を襲う魔族がいなかった。魔王が脆弱と言い放ち、喰らうことを良しとしなかった人間に手を出した瞬間、王の意思に反したと見なされ、狩られる側に落とされてしまうからだ。
「また、随分古い話を持ってくるね。同族を喰らった魔力なんて、もう一欠片も残ってないよ」
「なら、どうやって」
「シアが来る前までは、確かにこの土地は俺にとってかなり居心地が良かった。濃い瘴気のおかげで魔力生成に事欠く事もなかったし」
シアが毎日浄化し聖柱を立てたため、今では一部を除き空気中から魔素を取り込む事が難しいほど、この土地は澄んでいる。
「けど、魔力の補給方法は他にもある。方法は教えないけど」
アルは風邪で伏せるシアを思い浮かべ、こっそりため息をつく。先日怪我を治してもらったとき、シアから神気を抜きすぎてしまったな、と止められなかった自分を反省する。
やめなければとは思ったが、シアの反応があまりに可愛くて、やり過ぎたなんて善意100%のシアには絶対言えない。
「人を、喰ったのか?」
「喰ってない。第一こんな狭い町で失踪者が出たら大事件だろ。信じる信じないは自由だが、俺は今まで人を喰ったことも狩ったこともない」
魔族の中でも圧倒的強者だったアルにとって、人間など眼中に入れる価値もなかった。
「じゃあ、先代聖女はなぜ死んだ?」
彼女、先代聖女が魔ノ国に乗り込んで来るまでは。
「セイカは……先代聖女が死んだのは、確かに俺のせい……なんだろう、な」
彼女と過ごした日々はとても短く、今でも忘れられないくらい鮮明で。
そして自分の価値観を塗り替えていった突風のようなその人は、自身の宝物を魔族である自分に託してその短い生涯に幕を下ろした。