【コミカライズ企画進行中】捨てられ聖女は働かないっ!〜追放されたので念願のスローライフはじめます〜
手持ち無沙汰になった私は作りかけていたフード付きの羽織りを縫い始めた。
遮光性の高い真っ黒な布を手に入れたので、アルの月光対策も兼ねてこっそりコレを作ることにしたのだ。
昔、アルに会ったときも、こんな感じの服を着ていたなと思い出す。ひと針、ひと針、祈りを込めて丁寧に縫う。
『怪我をしませんように』
『痛い思いをしませんように』
『満月の光から守ってくれますように』
『彼が無事でありますように』
どれくらい時間が過ぎただろう? 大分集中していたので、わからないが最後のひと針を縫い終わって糸を切る。
「変じゃない、かな?」
出来上がりを確認し、羽織ってみる。
アル用に作ったので、私が着るとかなり大きいそれは、初めて作ったにしては上出来だ。だけど、コレが構築された呪詛に対して力を発揮するにはまだ足らない。
「早く、帰ってこないかな」
椅子に座った私はそうつぶやいて、あくびを漏らす。流石に眠たいと目を擦ってうとうとし始める。
不覚にもそこから眠りに落ちるまでは一瞬で、私はそのままテーブルに顔を伏せて寝落ちした。
◆◆◆◆◆◆◆
今日は、片付けるまでに随分時間がかかったなとアルはため息を漏らす。
年単位で構築されるこの呪詛はシアの力が強くなるに従って、大きな力を発揮する。
もう、呪詛は完成間近なのだろう。間違ってもシアに付き纏うことがないように、最後の時は確実に仕留めなければ、とアルは心に刻む。
寝ているであろうシアを起こさないように気配を絶ってそっとドアを開けるとダイニングルームから灯りが漏れていた。
不審に思ってそこを覗けば、真っ黒な羽織りをすっぽり被ったシアがテーブルに伏せて寝息を立てていた。
視線をずらせば鍋に入っているミルク煮とティーポットカバーのかけられた飲み物が目につく。
「待ってた、のか」
今日はひと月の中で一番力が弱いはずなのに、途中で目が覚めたということはもう呪いは効かないらしい。
それでも言う事を聞いて大人しく家で待っていたあたり、本当にシアは素直でいい子だなと思う。
アルはティーポットからお茶を注いで一口飲む。カバーのおかげでまだ温かいそれにはシアの神気がいつもより多く宿っていた。
自分が何をして来たのかもう分かっているだろうシアは、どんな祈りを込めてコレを用意して待っていたのだろう。
こんな夜更けに自分のためにわざわざ用意してくれたのかと思うと、その気遣いが嬉しくて、先の掃討でささくれだった気持ちが溶けていく。
「ありがとう、シア」
起こさないように小さく囁いた声が夢の中に落ちているシアに届くわけないのだが、タイミングよく幸せそうに笑った。
「ふふっ、どんな夢を見ているんだか」
シアのその顔が子どもの頃の寝顔と同じで、アルはつられたようにふわりと優しく笑う。
アルはシアをベッドに運ぶためそっと抱えた。
遮光性の高い真っ黒な布を手に入れたので、アルの月光対策も兼ねてこっそりコレを作ることにしたのだ。
昔、アルに会ったときも、こんな感じの服を着ていたなと思い出す。ひと針、ひと針、祈りを込めて丁寧に縫う。
『怪我をしませんように』
『痛い思いをしませんように』
『満月の光から守ってくれますように』
『彼が無事でありますように』
どれくらい時間が過ぎただろう? 大分集中していたので、わからないが最後のひと針を縫い終わって糸を切る。
「変じゃない、かな?」
出来上がりを確認し、羽織ってみる。
アル用に作ったので、私が着るとかなり大きいそれは、初めて作ったにしては上出来だ。だけど、コレが構築された呪詛に対して力を発揮するにはまだ足らない。
「早く、帰ってこないかな」
椅子に座った私はそうつぶやいて、あくびを漏らす。流石に眠たいと目を擦ってうとうとし始める。
不覚にもそこから眠りに落ちるまでは一瞬で、私はそのままテーブルに顔を伏せて寝落ちした。
◆◆◆◆◆◆◆
今日は、片付けるまでに随分時間がかかったなとアルはため息を漏らす。
年単位で構築されるこの呪詛はシアの力が強くなるに従って、大きな力を発揮する。
もう、呪詛は完成間近なのだろう。間違ってもシアに付き纏うことがないように、最後の時は確実に仕留めなければ、とアルは心に刻む。
寝ているであろうシアを起こさないように気配を絶ってそっとドアを開けるとダイニングルームから灯りが漏れていた。
不審に思ってそこを覗けば、真っ黒な羽織りをすっぽり被ったシアがテーブルに伏せて寝息を立てていた。
視線をずらせば鍋に入っているミルク煮とティーポットカバーのかけられた飲み物が目につく。
「待ってた、のか」
今日はひと月の中で一番力が弱いはずなのに、途中で目が覚めたということはもう呪いは効かないらしい。
それでも言う事を聞いて大人しく家で待っていたあたり、本当にシアは素直でいい子だなと思う。
アルはティーポットからお茶を注いで一口飲む。カバーのおかげでまだ温かいそれにはシアの神気がいつもより多く宿っていた。
自分が何をして来たのかもう分かっているだろうシアは、どんな祈りを込めてコレを用意して待っていたのだろう。
こんな夜更けに自分のためにわざわざ用意してくれたのかと思うと、その気遣いが嬉しくて、先の掃討でささくれだった気持ちが溶けていく。
「ありがとう、シア」
起こさないように小さく囁いた声が夢の中に落ちているシアに届くわけないのだが、タイミングよく幸せそうに笑った。
「ふふっ、どんな夢を見ているんだか」
シアのその顔が子どもの頃の寝顔と同じで、アルはつられたようにふわりと優しく笑う。
アルはシアをベッドに運ぶためそっと抱えた。