【コミカライズ企画進行中】捨てられ聖女は働かないっ!〜追放されたので念願のスローライフはじめます〜
「アル、大好きよ」
本人に届かないのをいい事に、私は言えなかったそれを口にする。
「お願いだから、距離を取らないで」
言葉にしていないだけで、私の気持ちなんてとっくの昔にアルにバレているのかもしれない。
だから、話しすらさせてもらえないのだろうか?
「アルに沢山殺させて、呪詛の肩代わりをさせているくせに、好きになって、ごめん……なさい」
私は罪を告白するかのように懺悔する。
「アルに護られる小さな子どもじゃなくなっても、私はずっとアルと一緒にいたいの」
もしも、このまま一緒にいられたとしても、生きる時間が違うから、今はアルの方が年上の見た目でも、いずれ私が追い越して、私だけが歳を取り、そして最期はアルを遺して逝くのだろう。
遺されるのは、つらい。それは、私もよく知っている。
アルが大事だと思うなら、彼に肩代わりさせてしまった呪詛を解いたあとは、同じ時間を生きられる誰かといる事を勧めるほうがいいのかもしれない。
それでも、もう自分ではどうしようもないほどに、好きという感情が育ってしまったせいで、一緒にいる時間を望んでしまう。
「ごめん、ね。身勝手で」
魔族がヒトを喰らうなら、いっそのことアルに食べられたいとすら思う。
血液一滴、骨の一欠片すら残さずに。
私の全部がアルの血肉となって、彼の中に残るなら、それはそれで幸せなことではないかと思うほど、彼が欲しい。
「我ながら、思考がヤバいな」
そんな考えを苦笑して飲みこみ、私はアルの髪を撫でる。サラサラとした髪質が指に心地いい。
「危なくてもいいから、側に置いて欲しい」
私は起きない無防備なアルにつぶやくように懇願する。
起きている時に言わなければ意味がないのに、今の関係に名前を望んで、アルに去られるのが怖かった。
アルの髪が心地良すぎて、撫で過ぎたのだろう。うぅっと小さな声が漏れてアルの身体が動く。そろそろ起きるかな、と思って手を止めたところで、寝ぼけたようにぎゅっと腕に力が込められ抱きしめられる。
身体が密着した事でアルの心音がよく聞こえ、私の鼓動が早くなる。
「……セ……イカ」
アルの口からつぶやかれた寝言を耳が拾う。
「セイカ……悪い、な。……気づかなくて」
今度ははっきりと、セイカと呼ぶ。後悔が滲んだその声で、形のいい眉を寄せて。
(誰、だろう? セイカって)
私の知らない女の人の名がアルの口から溢れ、嫌な音を立てて胸の奥が軋んだけれど。
「大丈夫、大丈夫」
アルの顔がとても悲しそうだったから、私はアルを抱きしめ返してトントンと大きな背中を叩いて、あやす。
「全部、夢だから、大丈夫」
昨日は余程疲れたのだろう。アルはまた、規則正しい寝息とともに夢の中に落ちた。
「怖いの、怖いの、魔ノ国まで飛んで行け」
私は小さな声で呪いを唱える。少しでも、アルがよく眠れるようにと祈りを込めて。気休め程度だけど、と額にキスをしようとして、やめる。
「……妬かないわけでは、ないのよ? 無防備なアルが悪い」
そうつぶやいて、一瞬だけ唇に触れた。今度は、私もアルの夢に出たらいいなと願って。
本人に届かないのをいい事に、私は言えなかったそれを口にする。
「お願いだから、距離を取らないで」
言葉にしていないだけで、私の気持ちなんてとっくの昔にアルにバレているのかもしれない。
だから、話しすらさせてもらえないのだろうか?
「アルに沢山殺させて、呪詛の肩代わりをさせているくせに、好きになって、ごめん……なさい」
私は罪を告白するかのように懺悔する。
「アルに護られる小さな子どもじゃなくなっても、私はずっとアルと一緒にいたいの」
もしも、このまま一緒にいられたとしても、生きる時間が違うから、今はアルの方が年上の見た目でも、いずれ私が追い越して、私だけが歳を取り、そして最期はアルを遺して逝くのだろう。
遺されるのは、つらい。それは、私もよく知っている。
アルが大事だと思うなら、彼に肩代わりさせてしまった呪詛を解いたあとは、同じ時間を生きられる誰かといる事を勧めるほうがいいのかもしれない。
それでも、もう自分ではどうしようもないほどに、好きという感情が育ってしまったせいで、一緒にいる時間を望んでしまう。
「ごめん、ね。身勝手で」
魔族がヒトを喰らうなら、いっそのことアルに食べられたいとすら思う。
血液一滴、骨の一欠片すら残さずに。
私の全部がアルの血肉となって、彼の中に残るなら、それはそれで幸せなことではないかと思うほど、彼が欲しい。
「我ながら、思考がヤバいな」
そんな考えを苦笑して飲みこみ、私はアルの髪を撫でる。サラサラとした髪質が指に心地いい。
「危なくてもいいから、側に置いて欲しい」
私は起きない無防備なアルにつぶやくように懇願する。
起きている時に言わなければ意味がないのに、今の関係に名前を望んで、アルに去られるのが怖かった。
アルの髪が心地良すぎて、撫で過ぎたのだろう。うぅっと小さな声が漏れてアルの身体が動く。そろそろ起きるかな、と思って手を止めたところで、寝ぼけたようにぎゅっと腕に力が込められ抱きしめられる。
身体が密着した事でアルの心音がよく聞こえ、私の鼓動が早くなる。
「……セ……イカ」
アルの口からつぶやかれた寝言を耳が拾う。
「セイカ……悪い、な。……気づかなくて」
今度ははっきりと、セイカと呼ぶ。後悔が滲んだその声で、形のいい眉を寄せて。
(誰、だろう? セイカって)
私の知らない女の人の名がアルの口から溢れ、嫌な音を立てて胸の奥が軋んだけれど。
「大丈夫、大丈夫」
アルの顔がとても悲しそうだったから、私はアルを抱きしめ返してトントンと大きな背中を叩いて、あやす。
「全部、夢だから、大丈夫」
昨日は余程疲れたのだろう。アルはまた、規則正しい寝息とともに夢の中に落ちた。
「怖いの、怖いの、魔ノ国まで飛んで行け」
私は小さな声で呪いを唱える。少しでも、アルがよく眠れるようにと祈りを込めて。気休め程度だけど、と額にキスをしようとして、やめる。
「……妬かないわけでは、ないのよ? 無防備なアルが悪い」
そうつぶやいて、一瞬だけ唇に触れた。今度は、私もアルの夢に出たらいいなと願って。