【コミカライズ企画進行中】捨てられ聖女は働かないっ!〜追放されたので念願のスローライフはじめます〜
「……アルが魔族なの知ってた。初めて会った日、倒れたときにフードの下見ちゃったから。でも、アルが隠してるみたいだから黙ってた。勝手に見て、ごめんなさい」
シアは怯えてなどおらず、小さな手をアルの手に重ねた。
「爪黒いのね。それは知らなかった」
長い爪とツノかっこいいとシアは空いている方の手でヒトにない黒い爪とツノに触れる。
驚いたアルに、シアは続ける。
「ふふ、変なアル。怖いわけないじゃない。だって、アルは私の事傷つけたりしないのに」
そう言って、いつもと変わらない顔で笑った。
「どうしたの、アル? そんな悲しそうな顔をして」
「悲しそう? 俺が?」
「だって、泣きそう。誰かに魔族だからって虐められたの? 私がやっつけてあげようか?」
いい子いい子とフードがなくなったアルの頭を撫でたシアは、
「私がアルの事を守ってあげる! 私結構強いのよ?」
と得意げに笑う。
「守る? シアが?」
何にもできなさそうな、こんなか細い手で? と首を傾げたアルに、
「うん! アルの事大好きだから、守ってあげる」
シアはそう言って抱きついてくる。魔族であると知ってもシアは変わらずシアのままで、そんな彼女に大好きだと言われてアルは戸惑う。
『一度くらい、愛し、慈しみ、育て、愛される喜びを知ってはどう?』
セイカの声が耳元で聞こえた気がした。
「だから泣かないで。アルが泣いたら私も悲しい」
戸惑うアルの背を優しく叩きながら、シアは言葉を選び、一生懸命伝えようとする。
「アルが魔族でも大好きだよ」
なんの利害も駆け引きもなく、無条件にこんなに真っ直ぐ信頼を向けられたことなど、魔族として生きてきた長い生で初めての事だった。
「アルは、私が人間だから嫌い? 私のこと、怖い?」
アルは今まで一緒に過ごしてきた時間を思う。シアの事を嫌えるはずがなかった。
「俺もシアのこと大好きだよ。人間とか関係なく」
例え、彼女が魔族にとって脅威になり得る聖女であったとしても。
「……良かった。もう会えなくなるのかと思った」
安堵したようなシアの声に、アルは彼女を抱きしめ返して頭を撫でる。
「シアは強いなぁ。俺、一応魔族の中で一番強いんだけど」
小さな小さな子どもなのに、どうやってもこの先シアに勝てる気がしない。
「えーアルがぁ? じゃあ魔族って大したことないのね。おもちゃの銃で倒れるし」
「……アレは本当に痛いんでやめてください」
聖女である事を知らず、その力をコントロールできないシアの全力の攻撃はまともに受けたら冗談じゃなく倒れてしまう。
「シア、誰にも見つからないで。誰にも奪われないで。どうか、いつまでも笑っていて」
アルは懇願するように、シアにそうつぶやく。
「俺の聖女」
「どういう意味?」
腕の中できょとんと首を傾げるシアに、アルは答えず穏やかに笑う。
「シアが俺のこと守ってくれるなら、俺もシアの事守ってあげるから。俺は、俺の聖女を傷つけないから。もう少しだけ、一緒にいてもいいかな?」
「少し? ずっと一緒にいればいいじゃない。大きくなっても、ずっとアルといてあげる」
そうだったら、どれだけ良かっただろう。返事ができない代わりに、アルはシアの髪を優しく撫でる。
先代聖女との約束も、誓約魔法も関係なく、ただシアが大きくなるまで見守ってやりたいとそう思った。
シアは怯えてなどおらず、小さな手をアルの手に重ねた。
「爪黒いのね。それは知らなかった」
長い爪とツノかっこいいとシアは空いている方の手でヒトにない黒い爪とツノに触れる。
驚いたアルに、シアは続ける。
「ふふ、変なアル。怖いわけないじゃない。だって、アルは私の事傷つけたりしないのに」
そう言って、いつもと変わらない顔で笑った。
「どうしたの、アル? そんな悲しそうな顔をして」
「悲しそう? 俺が?」
「だって、泣きそう。誰かに魔族だからって虐められたの? 私がやっつけてあげようか?」
いい子いい子とフードがなくなったアルの頭を撫でたシアは、
「私がアルの事を守ってあげる! 私結構強いのよ?」
と得意げに笑う。
「守る? シアが?」
何にもできなさそうな、こんなか細い手で? と首を傾げたアルに、
「うん! アルの事大好きだから、守ってあげる」
シアはそう言って抱きついてくる。魔族であると知ってもシアは変わらずシアのままで、そんな彼女に大好きだと言われてアルは戸惑う。
『一度くらい、愛し、慈しみ、育て、愛される喜びを知ってはどう?』
セイカの声が耳元で聞こえた気がした。
「だから泣かないで。アルが泣いたら私も悲しい」
戸惑うアルの背を優しく叩きながら、シアは言葉を選び、一生懸命伝えようとする。
「アルが魔族でも大好きだよ」
なんの利害も駆け引きもなく、無条件にこんなに真っ直ぐ信頼を向けられたことなど、魔族として生きてきた長い生で初めての事だった。
「アルは、私が人間だから嫌い? 私のこと、怖い?」
アルは今まで一緒に過ごしてきた時間を思う。シアの事を嫌えるはずがなかった。
「俺もシアのこと大好きだよ。人間とか関係なく」
例え、彼女が魔族にとって脅威になり得る聖女であったとしても。
「……良かった。もう会えなくなるのかと思った」
安堵したようなシアの声に、アルは彼女を抱きしめ返して頭を撫でる。
「シアは強いなぁ。俺、一応魔族の中で一番強いんだけど」
小さな小さな子どもなのに、どうやってもこの先シアに勝てる気がしない。
「えーアルがぁ? じゃあ魔族って大したことないのね。おもちゃの銃で倒れるし」
「……アレは本当に痛いんでやめてください」
聖女である事を知らず、その力をコントロールできないシアの全力の攻撃はまともに受けたら冗談じゃなく倒れてしまう。
「シア、誰にも見つからないで。誰にも奪われないで。どうか、いつまでも笑っていて」
アルは懇願するように、シアにそうつぶやく。
「俺の聖女」
「どういう意味?」
腕の中できょとんと首を傾げるシアに、アルは答えず穏やかに笑う。
「シアが俺のこと守ってくれるなら、俺もシアの事守ってあげるから。俺は、俺の聖女を傷つけないから。もう少しだけ、一緒にいてもいいかな?」
「少し? ずっと一緒にいればいいじゃない。大きくなっても、ずっとアルといてあげる」
そうだったら、どれだけ良かっただろう。返事ができない代わりに、アルはシアの髪を優しく撫でる。
先代聖女との約束も、誓約魔法も関係なく、ただシアが大きくなるまで見守ってやりたいとそう思った。