【コミカライズ企画進行中】捨てられ聖女は働かないっ!〜追放されたので念願のスローライフはじめます〜
「謝罪は結構。約束を、果たして頂きたいのです」

「約束?」

 眉を顰めた私を見ながらクロードは頷く。

「俺の聖女に近づくな、と仰せですが、あのヒト、あなたに関してはどうしようもないレベルでポンコツなんで、私が契約の回収のお願いに参った次第です」

 普段の主人はそれはそれは強く、無双してなんて、クロードによるアル語りが始まり、長くなりそうだったので話を遮って私は続きを促した。

「我が主人の今の状況、あなたはご存知か? 魔力を碌に補給できず、飢えているにも関わらず、呪いの対価を払い続けている。だというのに、瘴気を払う天敵を側に置き、その聖女から神気も魔力も奪いもしない」

「……それ、どういうこと?」

「やはり、話していないのですね。あのポンコツがっ」

 死ぬ気かあのバカと舌打ちして悪態をつくクロードの様子を見て、私はこのヒトが自分のためではなく、アルのために私に会いに来たのだと知った。
 アルに、味方がいるらしい。
 それがなんだか嬉しくて、私は顔を綻ばせ銃をしまった。

「私、あまり魔族の生態に詳しくないの。アルと今の魔ノ国の状況について、詳しく教えてくれないかしら」

「話ができるタイプの方で安心しました。セイカ様は本当にヒトの話を全く聞かない方だったので」

 ウチの主人といい勝負ですけどね、とため息を吐くクロードに、

「えっと、なんか、本当にごめんね?」

 非常に居た堪れない気持ちになった私はお詫びに手持ちのサンドイッチを献上した。

 ーー小一時間後

「何でもかんでもひとりで抱え込みやがって! タスク管理下手かっ!! 言えよ! 面倒臭いんだよ、この察してちゃんがぁぁあぁあ!!」

「分かる、それ超同意っ! 言わなきゃ分かんないってーの、あのカッコつけがぁぁ。顔が良ければ何しても許されると思うなよ! いつまでも誤魔化されるか、アルの阿呆っっっ!!」

 私はガシッとクロードと握手を交わす。アルへの不満という共通の話題があった私たちは、種族の垣根を超えてあっという間に仲良くなっていた。

 クロードから聞いた話は、全部私の知らないアルと魔族とそして先代聖女の話だった。

「要約すると、国のために結婚するなんて冗談じゃないって、私のひー? おばあちゃんが身重の状態で、魔ノ国に亡命して城を占拠し居座った挙句、次代の聖女を好きにしていいからうちの子よろしくって我が子押し付けて死んでいったと。子どもの父親誰よ」

「それは聞いてないな。身分違いらしくて、貴族なんて滅んでしまえって言ってたから相手は平民なんじゃないのか?」

 エリアス家は聞いた事がないので、おそらく先代聖女のやらかしで没落したのだろう。
 もともと貴族であるラウル様あたりは知っているかも知れないが、もう私には関係のない話だ。
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