可愛く着飾って、もっと愛して〜強引でめちゃくちゃな私のクチュリエ様〜
「じゃあ、仕事で学校(ここ)へ来たんだ。そろそろ行くとしよう」

被っていたハットをグッと下げ、去って行こうとするKAZUSHIが廊下の外で背を向けた。

「一成、恥はかかせるなよ。わざわざお前に割いてやった時間だ」

最後まで冷淡な声はもはや視線を向けることもなく、不快感をあらわにして。
だけど次の瞬間、くるっと顔だけ振り向いて私の方を見た。

「オグラナノ!君のことはいつでも歓迎するよ、よかったら私のモデルにならないか?」

は、何言って…!?

その顔は私と話す時のKAZUSHIだった。
HAHAHAと笑ってさっきの表情とは全く違う、陽気な…


一体どっちが本当のKAZUSHIなんだろう。


「また会おう!」

Bye!と手を振って、カツカツと音を立てながら歩いて行った。

この絶望かとも言えるどんよりした空気を残して…

「……。」

え、えっと…
どうしよう何か言った方が?

でも何て言えば…

一成が俯いてる、こんな姿見せるのは初めてで。

「うわっ」

話しかけようと口を開いたのに、一成に振り払われて変なところから声が出ちゃった。
転びはしなかったけど思いっきりブンッて払われたから体制を崩した。

「いっせ…っ」


―ダンッ 


アトリエ中に鈍い音が響く。

「むかつく…っ!」

一成が壁を打ち付けた音だ。

ぎゅーっと壁を押し込んで、あまりの強さに腕が震えている。

下を向いたまま震える姿は怒りに満ちて…
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