可愛く着飾って、もっと愛して〜強引でめちゃくちゃな私のクチュリエ様〜
「ナノ…」

「ちょっと!何コレ!?どうゆうつもり!?」

スマホの画面を開いて前にグッと見せるように差し出した。

つい大きくなってしまった声は抑えきれなくて、キリッと眉は吊り上がってる。

「ショーはやめるってどうゆうことなの!?」

“ショーはやめる”

そう一言だけ送られて来たLINE、何のショーかは聞くまでもない私が出るのは1つしかないんだ。

「何よコレ!やめるって何!?何勝手に…っ」

「俺に来たオファーだ、断るのだって俺の自由だろ?」

その目は冷たくて、少しだけ重なってしまった。

似てるのは声だけじゃない、顔だって…

「そのオファーも気遣われて来たやつだ、むしろ断った方が礼儀だろ」

「何言って…っ」

ふいっと視線を逸らして前を向いた。
すぐに目を逸らされたことに寂しさを感じて。

「もういらないんだよ!」

あと数歩、きっと5歩くらいで一成の背中が掴める。

でも全部を拒絶するような声に足がすくむ。

「終わりだ、何もかも…!」

力の入った声なのに悲しそうで、表情は見えないのに泣いてるんじゃないかって思った。

でもそんなの一成らしくない。

「何それ…、なんでそんなこと言うの!?終わりって何!?まだ始まってないけど!」

一成の背中に呼びかけるように叫んだ。

廊下には誰もいなくて私たちしかいない、私の声は一成にしか届かないはずなのにちっとも振り返ってはくれなくて。
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