可愛く着飾って、もっと愛して〜強引でめちゃくちゃな私のクチュリエ様〜
「私を選んだのは一成でしょ!一成がこの世界に私を引き込んだの!なのに勝手に終わらせないでよ!そんな勝手なこと言わないでよ!!」

ファッションのこともモデルのこともよく知らなかった。

何も知らなかった。


でもそんな私の手を引いて連れて来てくれたのは一成だった。


「見返したいんでしょ!?見返そうよ!」


私だって悲しかったし、悔しかった。

あんなこと言われてすっごい悔しかった。


だって田所一成はそんなやつじゃない。


「このまま終わりなんてそっちのがふざけないでよっ!!」

私の声にならない声は、一成にどれぐらい届いたんだろう。

ポケットに手を入れたままの後ろ姿では何もわからない。

ぜぇはぁと私ばっか必死に息をしていた。

「……。」

「…。」


全然届かないの…?


「…クチュリエの意味、前に話したよな?」

「え、クチュリエの意味…?」 


“クチュリエ…って呼ばれます、よね??フランス語で男性裁縫師だって…”

“裁断や裁縫だって大事だ…でも実際は裁縫師やデザイナーを指す言葉だ”


「うん、聞いたけど…」

そういえば前に、図書室で“クチュリエ様”って呼ばれた時イラッとする表情を見せてた。

その言葉のどこに不快に感じる要素があるかなんて考えたことなかった、一成がそんなふうに思ってるなんて考えたことなかった。

初めて聞いたから。
< 108 / 130 >

この作品をシェア

pagetop