可愛く着飾って、もっと愛して〜強引でめちゃくちゃな私のクチュリエ様〜
机から教科書を取り出してスクールバッグに入れて、どんどん静かになっていく教室は物思いに浸かりそうになる。
早く支度すればいいのに、人が減っていくたびゆっくりしてしまうのは何でだろうね。

なぜか帰りたくなくなるの。

行くところもないんだけど…

誰もいなくなった教室、開けっ放しだった窓からひゅーっと風が入り込んで来る。

「寒っ」

…これ閉めなきゃいけないんじゃないの?
日直窓閉め忘れたな、しょうがないなぁ…

スクールバッグを机の上に置いたまま窓際まで、窓を閉めようと思ったんだけどここからグラウンドがよく見えたから。

「サッカー部がボール追いかけてる…」

サッカー部だもんね、基本中の基本だよねそんなの。

でも、このまま帰るだけじゃないことが少し羨ましかった。もう私はあの場所に行けないから…

「…っ」

じゃなくて、本当はそうじゃなくて。


行くのが怖いの、だから何もないフリをしてるの。

自分から遠ざけてるだけなの。


キスの意味を聞くのが怖くて。


私にとっては大きかったよ、あいさつでは片付けられないよ…


“それともなんだ?足りなかったか?”

足りない全然、一成がー…


「まだいるじゃねーか」

「え…?」

振り返る、声の聞こえた先を…
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