大好きなお姉さまが悪役令嬢?!処刑回避のためにひきこもったら、隣国の王子に狙われているようです?
 父親のその声が合図になったかのように、食事が運ばれてきた。
 セシリアがぐっすりと眠りこけてしまったのは、わけのわからない記憶のせいだ。
 夢だと思っていた。いや、あれは間違いなく夢だった。ただ夢から覚めても、内容はばっちりと覚えている。
 横目でチラリとエレノアを確認すると、目が合った。
「セシリア、こちらのジャムも美味しいわよ」
 エレノアがオレンジ色のジャムを手渡した。
 婚約破棄をつきつけられて落ち込んでいると思われたエレノアだが、そうでもなかった。しかし、夢の中の彼女は間違いなくジェラルドが好きだった。いや、執着かもしれない。そのいきすぎた歪んだ愛の先に待っているのが処刑である。
(早ければ今日。婚約解消の書類が届くはず。だけど陛下もお姉様のことを気に入っているから、意思確認のような書類だったはず)
 エレノアがすすめてくれたジャムをパンにたっぷりと塗りつける。
(婚約解消による慰謝料が提示されるけれど、それが最低金額で……ほかに領地をという話だったけれど、その領地も王家がもてあましている場所で……。だからお父様は婚約解消するメリットが見いだせず、陛下の思惑とおり、お姉様とジェラルド様の婚約は解消されず、このあとも続くのよね)
< 11 / 53 >

この作品をシェア

pagetop