大好きなお姉さまが悪役令嬢?!処刑回避のためにひきこもったら、隣国の王子に狙われているようです?
 いつの間にか、エレナによる魔法談義となっていた。だけど、こうやって丁寧に教えてくれるのは、エレノアがセシリアを認めている証拠。できるだけセシリアにもわかりやすい言葉で、という配慮も伝わってくる。
「昨日。お姉さまのパーティーに行ったとき、学園のホールに入ったのは初めてだったのですが、ここに来たことがあるかもって思いました」
「そうなの? あ、だから早く帰りたいって言ったのかしら? 過去の記憶が視えて、気持ちが悪くなってしまったとか?」
「それは、本当に疲れただけです。たくさん人がいたからです。セシリア、あんなにたくさんの人がいるのは、初めて見ました」
 公爵邸で開くパーティーは、こぢんまりとしたものが多い。それにセシリアはまだ夜会にも参加できない。だから、昨日の卒業パーティーが、セシリアの知るパーティーでは一番参加人数が多いものだった。
 それでもエレノアは、目を細くしてセシリアに視線を向ける。それはまるで何かを疑っているように、怪しんでいるようにも感じた。
「エレノアお嬢様。ここにいらしたのですね」
 そう声をあげながら走ってきたのは、執事の息子のケビンだった。まだ年若い彼は、執事としての仕事を学んでいるところだ。また、その若さを生かして、先触れとして駆けずりまわることもある。
< 16 / 53 >

この作品をシェア

pagetop