大好きなお姉さまが悪役令嬢?!処刑回避のためにひきこもったら、隣国の王子に狙われているようです?
 それに対してエレノアだって負けてはいない。仮にも王太子の婚約者なのだ。庭園に咲き誇るような勿忘草色の髪はすっきりと結い上げられ、清純さを醸し出している。ぱっちりとした二重の瞳に、ふっくらとした唇も愛らしい。
 だというのに、その目だけは鋭くジェラルドを睨みつけていた。
 彼女の唇はゆっくりと開く。
「承知いたしました」
 スカートの裾をつまみ、淑女の礼をする。
 その姿を目にしたとき、母親としっかりと手をつないでいたセシリアの脳内には、誰のものかわからぬ記憶が流れ込んできた。
 ――エレノアは聖女イライザに毒を盛った。
 ――エレノアを処刑しろ! 首をはねろ!
(あ、これはネットで限定配信されたアニメのロマンスファンタジー小説『孤独な王子は救済の聖女によって癒される』略して『こどいや』の世界……って、この記憶は何?)
 セシリアは、母親とつないでいた手にきゅっと力を込めた。母親もちらりとセシリアに視線を向けたものの、不安そうにエレノアを見守っている。
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