大好きなお姉さまが悪役令嬢?!処刑回避のためにひきこもったら、隣国の王子に狙われているようです?
 まずセシリアが学園の大ホールで既視感を覚えたこと。それをセシリア自身が疑問に思い、エレノアに尋ねてきたこと。
 さらに会ったこともないイライザの名前を言い当てたこと。そして今、土地のリストから迷わずにフェルトンの街を選んだこと。領地から近いと言っているが、絶対にほかの理由があるはずだと。
 セシリアの顔はしだいに青ざめていく。昨日、脳内に流れ込んできた謎の記憶。そして今朝方、夢だと思っていたエレノアの記憶。
 それが過去視や遠視といった魔法の力である可能性が出てきた。そしてこの能力は選ばれし人間にしか使えない。
「うぅむ」
 腕を組み、眉間に深くしわを刻む父親は、大きくうなった。母親も両手をしっかりと組み合わせ、はらはらとしている。
「エレノアの話を聞く限り、まだ半信半疑のところはあるが……。セシリア、本当の理由を言いなさい。フェルトンの街を選んだ、本当の理由」
「お父さま、怒らない?」
 セシリアとしてはそれが怖かった。流れ込んだ記憶をしゃべったら、怒られるのではないか。七歳の女の子が考える内容としては妥当である。
「怒らない。怒るわけがないだろう?」
 やさしく微笑む父親を見て、セシリアはほっと胸をなでおろす。隣からエレノアが手を伸ばし、セシリアの手をゆるりと握りしめた。
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