大好きなお姉さまが悪役令嬢?!処刑回避のためにひきこもったら、隣国の王子に狙われているようです?
 セシリアは流れ込んできた記憶の一部――フェルトンの街にはさとうきびがあり、さとうきびから砂糖が作れると説明した。
「砂糖?」
 父親だって耳にしたことがない言葉なのだろう。セシリアだって、謎の記憶――前世の記憶がなければ知らない言葉だった。
「甘味料の一つで、白い粉のようなものです。今は、料理に甘い味をつけるために、果物の果汁やはちみつを使っていますけど、やはり独特の風味があります。ですが、砂糖にはそれがありません。クッキーやケーキに使うと、とっても美味しく作れます」
「まぁ、それは画期的ね」
 甘いものには目のない母親が、瞳を輝かせた。
「まだこの国には砂糖がありません。フェルトンの街にあるさとうきびで砂糖を作り、売ればそれなりの収入になるかと思います」
 セシリアの言葉に、エレノアはぱちぱちと目を瞬いた。信じられないとでも言いたいようだ。
 父親も右手で口元をおさえ、何やら考え込んでいる様子。
「やはり、エレノアの言うとおりかもしれないな。セシリアには未来視、もしかしたら過去視なども備わっているのかも知れない。だが、幼いがゆえ、その力をうまく制御できないのだろう。誰かがきちんと導いてやらねば……」
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