大好きなお姉さまが悪役令嬢?!処刑回避のためにひきこもったら、隣国の王子に狙われているようです?
(わたしはセシリア・ケアード、七歳。エレノア・ケアードの年の離れた妹。このままでは、お姉様は斬首刑に……)
 流れ込んできた記憶の処理に追いついていないが、気がつけばセシリアは母親とつないでいた手をはなし、エレノアへと近づいた。
「お姉さま」
 子ども特有の甘えた声だ。誰が見てもその子がエレノアの血縁者であるとわかる見目だった。勿忘草色の髪の毛は、垂れたうさぎの耳のように結ばれ、琥珀色の目はぱっちりとしていて愛嬌がある。
「王太子殿下とのお話は終わりましたか? セシリア、人がいっぱいで疲れてしまいました。はやく、おうちに帰りたいです」
 ホール内に響くセシリアの声に、両親の慌てる姿が見てとれた。父親なんぞ、額に青筋をたててこちらに走ってきそうな勢いだが、それをゆるりと首を振って制したのはエレノアだ。
「そうね。大事なお話は終わりましたから、今日はもう、帰りましょう」
 エレノアは手を伸ばして、セシリアの小さな手をしっかりと握りしめる。
「ジェラルド王太子殿下。手続きに必要な書類については、ケアード公爵邸にお送りください」
 もう一度、エレノアが優雅に腰を折ったため、セシリアもそれに倣う。
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