大好きなお姉さまが悪役令嬢?!処刑回避のためにひきこもったら、隣国の王子に狙われているようです?
 それから十日後。父親たちが戻ってきた。シオンもコンスタッドも、ふたたびフェルトンの街を訪れ、しばらくの間、滞在するとのこと。エレノアが小さく喜んだのをセシリアは見逃さなかった。
「王城は大混乱だったよ」
 夕食の席で父親がそう言った。
「ジェラルド殿下とイライザ殿の婚約もまとまっていなかったようですしね。それに、ジェラルド殿下もイライザ殿も、シオン殿下を本当に私の従者だと思っていたのには、笑いが込み上げてきましたよ。近隣諸国の王族の顔すら覚えていないような者が、国のトップにふさわしいとは思えませんがね。この国の行く末は、少し心配ですね」
 ははっと笑ったコンスタッドは、そのままエレノアに視線を向けた。するとそれに答えるかのように、エレノアもにっこりと微笑む。
「あと十年、持つか持たないかだろう」
 シオンがそう言うと、グラスの中の水を見つめている。なんとなく、気まずい空気が流れた。
 その流れを断ち切ったのコンスタッドだ。
「そうそう、ケアード公爵。国に戻ったら、正式に申し込みをしてもよろしいでしょうか?」
 彼はワイングラスを手にし、緊張をほぐすかのようにコクリと一口飲んだ。
< 48 / 53 >

この作品をシェア

pagetop