キミの隣が好き
 私は家に帰ると、夕飯の支度をした。それから再び、コートを羽織る。

「じゃ、バイトに行ってくるね。クリスマスは土曜日にやろうね」
「うん。行ってらっしゃい!」

 妹弟に見送られて、家から出る。外に一歩出た途端、北風の冷たさにブルっと震えた。
 今日は水曜日。父は夜勤なので、クリスマスパーティーは土曜日の夜に行うことにした。
 
「本当なら今頃、水都と公園デートをしていたのに」

 水都に、クリスマス空けておくように言われていた。だからバイトを入れなかったのだけれど、水都はインフルエンザでダウン。
 つい先ほどバイト仲間から、具合が悪いから代わってほしいと電話がきた。そいういうわけで急遽、バイトに行くことになった。
 コンビニのスタッフルームに入ると、パソコン画面を見ていた店長が「おう!」と片手を上げた。

「クリスマスなのに、突然悪いねぇ。予定あったんじゃないの?」
「大丈夫です。我が家は土曜日にクリスマスをするので」
「でもさ、シフトの予定表、二十五日にバツをつけていなかったっけ?」
「予定がなくなったので、大丈夫です」

 店長はまじまじと私を見ると、困った顔で、胡麻塩のような色合いの頭を掻いた。
 
「俺みたいなおじさんが、若い子の容姿を言うのはなんだけど……。前にゆらりさん。外見のレベルを一から十でいうと、自分はどれくらいか聞いてきたことがあったよね? あのときは七って言ったけれど、あれから良いことがあったんじゃない? レベルが九に上がっている」
「ええっ⁉︎」

 あのときの私は水都と絶交していて、自分に自信がもてなかった。
 店長にレベルを聞いた日に、水都がコンビニに来てくれた。あの日から、私の人生が好転した気がする。
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