キミの隣が好き
 もじもじする私に、店長は親戚のおじさんみたいな温かな眼差しを向けた。

「いやー、良かったねぇ。おじさんは嬉しいよ。ま、どうしてレベルが上がったのか、ツッコんでは聞かないけどね。話したくなったら、惚気、悩み、休み希望、なんでも聞くよ!」
「あはは! ありがとうございます」

 話したいことはあるけれど、残念ながら時間がない。私は急いで店に出ると、レジを開けた。
 夕方の時間帯は忙しい。慌ただしく動いていると、出勤してきた伊藤美月さんが、悲鳴をあげた。

「うわっ! な、なんで、ゆらりちゃんがいるの? 告白デートじゃ……」
「しぃー! みんなには内緒にしているんで!」

 伊藤美月さんは大学生。悩みを相談できる、優しいお姉さんである。
 美月さんに私は、今日水都と会うことを話していた。さらには、家族と魅音、岩橋くんにも話していないことを美月さんには話していた。それは──。

 焼肉屋さんの帰り。水都に告白をしようとしたらストップをかけられて、「クリスマスまで待って。僕から言うから」と、告白の予約をされたこと。

 美月さんは興味津々といった感じで、小声で聞いてきた。

「なんでなんで? どういうこと? 告白デートはどうなったの?」
「水都がインフルエンザにかかって、会えなくなったんです」
「なぁんだ、残念! だったら、お見舞いに行かないとね!」
「え⁉︎ お見舞い? でも家族と暮らしているし、移るから来なくていいって言われそう」
「差し入れを持っていくだけでいいんだって! この近くなんでしょう? ゆらりちゃんからの差し入れ、ミナトくん喜ぶと思うな」
「うーん……」

 水都からのメールでは、熱が下がって暇をしていると聞いている。だったら、お見舞いに行ってもいいのかな?
 
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