キミの隣が好き
 水都の彼女になりたいって、ずっと思っていた。待ち望んでいた告白に、涙がポロポロとこぼれる。

「私も、水都が好き。彼女になりたいです……」

 告白の返事をできた安堵感と嬉しさから、涙が止まらない。
「あっ、あ、うわ、グスッ」と変な言葉ばかりが口から出てきて、情けない。
 それなのに水都は、

「可愛い」

 と、抱きしめてくれた。
 クリスマスイルミネーションの星が瞬き、プレゼントの袋を背負ったサンタさんが梯子を登り、雪だるまたちが見守る中。
 私は水都の背中に手を回し、彼の胸に頭を預けた。

「ゆらりちゃんの匂いって安心する。ずっと肺に入れておきたい」
「えっ⁉︎ ダ、ダメだよ!! 昨日、シャンプーが切れちゃって。シャワーで洗い流しただけだから、臭いでしょ!」
「全然。むしろ、シャンプーのにおいに邪魔されなくて最高。ゆらりちゃん本来のにおいを吸っておこう」
「吸っちゃダメーっ!!」

 私は匂いフェチではないので、水都のこの感覚がわからない。そういうわけで、私も水都の胸に鼻を押しつけて、試しに吸ってみた。

(あれ? 特に匂いがしない? でもなんだろう。すごく落ち着く。幸せかも)

 嗅覚は原始的だと聞いたことがある。
 赤ちゃんはお母さんの匂いが大好きだし、においによって食物の腐敗や毒を知るという役割があるし、子孫繁栄に関わる遺伝子が体臭の好き嫌いに関係しているらしい。
 相手の匂いが好きで落ち着くというのは、長く一緒にいるための、遺伝子の作戦なのかもしれない。
 
(水都はかっこいいから他の女の子に取られたらどうしよう、って心配する気持ちがあったけれど……。香りの強いものをつけないで、私本来の匂いでいればいいのかも?)

 
 
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