キミの隣が好き
嗅覚の世界と、匂いフェチ。理性や理屈を超えた不思議な世界が、そこにはある。
そんなことを考えていると、頭上から、
「うわぁー……」
と、絶望したような声が降ってきた。
どうしたのかと顔を上げると、雪が降っていた。
水都の家の壁に映った光の中に、白い雪の結晶がはらはらと舞っている。
「素敵っ! これなに?」
「プロジェクターだよ。滅多に雪が降らないから、母親が買ったんだ」
「こういうのがあるなんて知らなかった! 素敵だね」
振り返ると、芝生の上にプロジェクターが置かれていて、丸い投影ランプから光が出ている。
家の壁を落ちていく、美しい雪の結晶。
しかし喜ぶ私とは違い、水都は怒っている。
「どうしたの?」
「母がつけたんだろうなって。離れた場所からでも、リモコンで操作できるんだ」
「うん」
「僕たちがぎゅーってしているのを見て、ムードを盛りあげようとしたんだろうけれど、そういうのいらないし」
「あ、なるほど」
「絶対に覗かないでって言ったのに!!」
カーテンは閉まっているけれど、気になって、隙間からこっそりと見ていたのだろう。
私は水都の母親は心配性であるのを知っているので、ハラハラしながら見守っていたのだと思うと、微笑ましい。
「私、やっぱり挨拶する」
「いいから!!」
「ううん。私もね、水都のこと、この先もずっと好きでいる自信がある。だから、その、長い付き合いになると思うノデ、水都の両親にちゃんと挨拶しておきたいデス」
緊張して、語尾がおかしな発音になってしまった。
水都は「あ、はい」と頷き、カクカクとした足取りで家の玄関に案内してくれた。
水都はインターフォンを押してから、玄関扉を開けた。けれど黙ったまま突っ立っているので、私が声を出すことにした。
「こんばんは。水都くんの友達の、鈴木ゆらりです。お庭にお邪魔して、すみませんでした」
ドダっとなにかがぶつかる音がして、奥の部屋の扉が勢いよく開いた。水都の両親が急足でスリッパを鳴らして、玄関に出てきた。
そんなことを考えていると、頭上から、
「うわぁー……」
と、絶望したような声が降ってきた。
どうしたのかと顔を上げると、雪が降っていた。
水都の家の壁に映った光の中に、白い雪の結晶がはらはらと舞っている。
「素敵っ! これなに?」
「プロジェクターだよ。滅多に雪が降らないから、母親が買ったんだ」
「こういうのがあるなんて知らなかった! 素敵だね」
振り返ると、芝生の上にプロジェクターが置かれていて、丸い投影ランプから光が出ている。
家の壁を落ちていく、美しい雪の結晶。
しかし喜ぶ私とは違い、水都は怒っている。
「どうしたの?」
「母がつけたんだろうなって。離れた場所からでも、リモコンで操作できるんだ」
「うん」
「僕たちがぎゅーってしているのを見て、ムードを盛りあげようとしたんだろうけれど、そういうのいらないし」
「あ、なるほど」
「絶対に覗かないでって言ったのに!!」
カーテンは閉まっているけれど、気になって、隙間からこっそりと見ていたのだろう。
私は水都の母親は心配性であるのを知っているので、ハラハラしながら見守っていたのだと思うと、微笑ましい。
「私、やっぱり挨拶する」
「いいから!!」
「ううん。私もね、水都のこと、この先もずっと好きでいる自信がある。だから、その、長い付き合いになると思うノデ、水都の両親にちゃんと挨拶しておきたいデス」
緊張して、語尾がおかしな発音になってしまった。
水都は「あ、はい」と頷き、カクカクとした足取りで家の玄関に案内してくれた。
水都はインターフォンを押してから、玄関扉を開けた。けれど黙ったまま突っ立っているので、私が声を出すことにした。
「こんばんは。水都くんの友達の、鈴木ゆらりです。お庭にお邪魔して、すみませんでした」
ドダっとなにかがぶつかる音がして、奥の部屋の扉が勢いよく開いた。水都の両親が急足でスリッパを鳴らして、玄関に出てきた。