キミの隣が好き
 公園でいじめられた次の日から、私は杏樹たちに、ぶらりと呼ばれるようになった。
 友達の佐藤乃亜は呼ばなかったけれど、気まずそうに私を避けるようになった。
 筆入れに、乃亜からの手紙が入っていた。

『あんじゅから、友だちをやめるよう言われた。言うことをきかないなら、わたしもいじめるって。ごめんなさい』

 こうして、私は一人になった。

 水都は怪訝な顔をして、ぶらりという、あだ名の理由を聞いてきた。ブスのブだなんて、話せるわけがない。
 杏樹に、水都といつ絶交するのか聞かれた。そのうちに、鉛筆や消しゴムを隠されるようになった。
 教科書にいたずら書きもされた。

『笑顔が気持ち悪い。笑うな!』

 笑顔が気持ち悪い──その言葉は呪いになった。笑うのが怖くなった。笑おうとすると、(ブスのくせに)と咎める声が自身の内に響くようになった。

 みなっちと呼ぶことをやめた。話しかけるのもやめた。一緒の登下校もやめた。
 それなのに杏樹は、「絶交しないとダメ。許さない」と言い張った。

 だから私は、水都にお願いをした。

「友達をやめよう」

 水都は今にも泣きそうな顔で、わたしと同様、お願いをしてきた。

「友達をやめるなんて言わないで」
「嫌なところがあったら直すから」
「ボクを嫌いにならないで」

 けれど私は、これ以上いじめられるのに耐えられなかった。杏樹に歯向かう勇気も度胸もなく、クラスの女子たちにこれ以上嫌われないようにすることで頭がいっぱいで。
 水都も大切だけど、クラスの女子たちとうまくやっていくほうがもっと大切だった。
 
 板挟み状態は、二週間ほど続いた。誰にも相談できなかった。
 そんなある日。いつもの出来事が起こった。

 
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