キミの隣が好き
 感情の豊かな声で押しまくる、高梨ひな。

「三ヶ月。ねっ、とりあえず、三ヶ月でいいから付き合って! 絶対に楽しいから!!」
「やだ」
「即答すぎない⁉︎ ちゃんと考えて!」
「考えている。でも、ごめん」
「なんで? 私のどこが気に入らないの?」
「気に入らないとかそういうことじゃなくて……他の人と付き合えば?」
「私は水都くんが好きなの! 水都くんよりも、かっこいい男子なんていないから!!」

 それまでの水都は、渋々答えているといった口調だった。それが、不機嫌に変わった。

「かっこいいって、どこらへんが?」

 高梨ひなは水都が怒っていることに気づいて、慌てて言葉を付け加えた。

「クールなところがかっこいい! なにを考えているのかわからないミステリアスなところも素敵だし、男子とつるまないで一人でいるのもいいなって思う。私もね、顔がいいから、水都くんの気持ちわかるよ。可愛いって言われると、この人上部だけしか見ていないんだって、がっかりするもん」

 水都は黙り込んでいる。怒りの圧を感じたのか、高梨ひなは早口になった。

「でもね、私! 顔だけで好きになったんじゃない。そこは誤解しないで。水都くんの全部が好きなの。それよりも、好きな人がいるなら教えてよ。名前を言いたくないなら、いるかいないかだけでもいいし!」

 盗み聞きはよくないって、わかっている。けれど、足が一ミリも動かない。だって、私も聞きたい。

 ——水都の好きな人って、誰?

 スマホを握りしめる。
 いないって言って──……。
 SNSでそうつぶやこうとして、止めた。私にそんなことを言う権利なんて、ない。

  
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