キミの隣が好き
 両親は、私が中学一年生のときに離婚した。
 学校から帰ってくると、母がメソメソと泣いていた。母は情緒不安定な人なので、特に気に留めなかった。
 母は泣き腫らした顔で「驚かないでね」と、前置きした。

「うっく。ひっく。ママね、彼氏と結婚しようと思うの。でも彼氏がね、自分の子供じゃないと愛せないって。他の男と出来た子供と暮らすのは嫌だって。昌幸さんがね、ゆらりとひよりとくるりを引き取るって。向こうのおばあちゃんも面倒を見てくれるって。離れても、ママはゆらりたちのことを愛しているからね」

 昌幸さんというのは、私の妹であるひよりと、弟のくるりの父親。残念ながら、私とは血がつながっていない。
 けれど私は、昌幸さんが大好き。

 私の家庭は少し、複雑。母は一回離婚している。私は前の人の子供。私は産みの父親の顔も名前も知らない。物心着いたときには、昌幸さんというパパがいて、ひよりとくるりがいた。
 
 私は冷静に状況を理解した。

(彼氏? 最近楽しそうに仕事に行っているから怪しいと思っていたけれど、そこの会社の人?)

 正解。母はガス会社の事務員をしていて、そこの社員と恋に落ちたらしい。
 私も、ひよりも、くるりも、父の味方をした。父は大病をしていて、入院中だった。

「私たちが、パパを支えようね!」

 きょうだい三人で一致団結し、父を助けようと誓った。
 両親が離婚した後。父のおばあちゃんは家を売り払い、私たちの家に来てくれた。私たちの学校のことを考えて、住み慣れた町に別れを告げたのだ。
 優しい父とおばあちゃん。
 裕福な生活ではなかったけれど、楽しかった。幸せだった。けれど去年、おばあちゃんは病気で亡くなった。
 裕福とはほど遠い、慎ましい生活。けれど、倹約には自信がある。貧乏だって、楽しく生きていける。


 ひよりとくるりは夕飯を食べ終えていたけれど、食べたいというのでコンビニ弁当を温める。
 中学二年生の妹ひよりは、ふわとろオムライス。小学六年生の弟くるりは、焼肉弁当。私は二人から半分ずつもらう。

【つぶラン】に感想を流す。

【ゆり@yurarinko・1分前
 バイトを終えて腹ペコ。オムライスと焼肉弁当が美味しすぎる! 幸せだー❤︎】

 裕福な人にとったら、私たちはかわいそうに見えるかもしれない。
 けれど、父は優しくてかっこいいし、お味噌汁を作るのが上手。今夜は介護仕事の夜勤でいないけれど、具だくさんのお味噌汁を作っていってくれた。
 私は大変に幸せだ。


 

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