キミの隣が好き
 月曜日。教室に入ってきた水都と目が合う。
 水都は微笑を浮かべ、私も照れながら笑みを返した。水都のそばに行って、挨拶をする。

「おはよう……」
「おはよう」

 絶交した八年があったからこそ、挨拶ができること。視線が交わることに幸せを感じる。胸が躍る。あぁ、やっぱり私は水都が好きなんだって再確認する。


 水都と仲直りしたことを魅音に話すと、当然といった顔をされた。

「仲直りするってわかっていた。むしろ、今までなんで仲直りしていなかったのか不思議。っていうか……」

 はっきりと話す魅音が、珍しく言葉を詰まらせた。魅音の拗ねた表情に、私は首を傾げた。

「なに?」
「言わない。ゆらりをつけ上がらせる気はない!」
「……?」

 意味不明。けれど魅音は話す気がないようで、真意はわからずじまい。


 お昼休み。「一緒に食べよう」と、水都が話しかけてきた。
 魅音に確認の視線を送ると、魅音はムスッとした表情をした。

「うち、お邪魔虫だね。一人で食べてもいいですけど」
「邪魔しているのは僕のほうだから。町田さんが嫌じゃなかったら、一緒に食べよう」
「俺も混ぜて!」

 岩橋《いわはし》結斗《ゆいと》が、水都の背後からひょうきんな顔を覗かせた。
 岩橋くんは水都の友達……だと思う。
 水都は一人でいるのに慣れているので、クラスメートに自分から話しかけたりしない。けれど、水都はずば抜けてかっこいいし、頭もいい。素っ気ない寡黙さが逆にクールな好印象をもたらす。水都と親しくなろうと、まわりが寄ってくる。小学生の頃からそんな感じだった。
 岩橋くんもその一人。明るい性格の彼は、水都にしょっちゅう話しかけている。お昼を一緒に食べているのもよく見かける。
 そういうわけで私は、水都と岩橋くんは友達だと認定しているのだけれど……。

 水都はむくれた顔をした。

「ダメ。混ぜない」
「なんで⁉︎ 俺はただ、鈴木さんと親睦を深めたいだけで……」
「それがダメー」

 岩橋くんの口から私の名前が出てきたことに困惑していると、魅音が肘で私の脇腹を小突いてきた。

「罪な女ですな」
「なに? どういうこと?」
「あのキラキラした笑顔はないわー。まさかゆらりが、魔性のスマイルを隠し持っていたとは!」
「なんの話をしているの?」
「みなっちは、ゆらりのピュアスマイルに惚れたんだと思うわ。さぁて、お弁当食べよう。お腹空いて死にそう」

 
< 60 / 132 >

この作品をシェア

pagetop