キミの隣が好き
練習とはいえ、美容室で働いている人に髪を切ってもらえる! しかも無料!!
私はすぐさま了承した。美容室が閉店してから、という話ではあるけれど、大変にありがたい。
浮かれていると、岩橋くんが急に真面目な顔になった。
「ゆらりさんって、うつむきがちだから気づかなかったけどさ。笑顔がいいよね。ほわほわしててさ、すげー癒される。やっぱさ、前髪短くしたら? 目が綺麗だしさ、そのほうが絶対に可愛い!!」
「そ、そうかな?」
「うん! で、俺と付き合おう!」
「ごめんなさい……」
「早っ! 悩んでよ!」
岩橋くんは軽い。どこまで本気なのかわからない。けれど、前髪を短くしたほうがいいというアドバイスは心に留めておくことにした。
話している間に、昇降口に着いた。岩橋くんは男友達を見つけて、そちらに行った。
岩橋くんが離れたことにホッとする。
靴を履き替え、顔を上げると──視線の先にいたのは、川瀬杏樹。
彼女は目が合うと必ずといっていいほど睨んでくるので、私は息を殺して、気づかれないようにする癖がついてしまった。
杏樹が下駄箱から離れてから動こうと思って、その場に立っていると、驚くことに名前を呼ばれた。
「鈴木さん。おはよう」
「えっ? あ……お、おはよう、ございます……」
小学校時代。水都と絶交した後、私はボスである川瀬杏樹と仲良くやっていこうと思った。いじめられないために。
けれど挨拶をしても、杏樹は挨拶を返してくれない。声が小さくて聞こえないのかと思い、大声で挨拶をした。すると、杏樹は思いっきり顔をしかめた。
「うぜー女。黙れ。あんたのこと嫌い」
それ以降、私は杏樹に挨拶をしない。彼女も挨拶をしてこない。それなのに、どうしたのだろう?
驚きすぎて次の動作に移れずにいると、杏樹はにっこりと笑った。
「教室まで一緒に行かない?」
「え……」
「いつまでもそこにいると邪魔になるよ」
慌てて下駄箱前から離れて、廊下を歩く。隣にいるのは、川瀬杏樹。
水都のことを言われるのだろうと、覚悟する。
私はすぐさま了承した。美容室が閉店してから、という話ではあるけれど、大変にありがたい。
浮かれていると、岩橋くんが急に真面目な顔になった。
「ゆらりさんって、うつむきがちだから気づかなかったけどさ。笑顔がいいよね。ほわほわしててさ、すげー癒される。やっぱさ、前髪短くしたら? 目が綺麗だしさ、そのほうが絶対に可愛い!!」
「そ、そうかな?」
「うん! で、俺と付き合おう!」
「ごめんなさい……」
「早っ! 悩んでよ!」
岩橋くんは軽い。どこまで本気なのかわからない。けれど、前髪を短くしたほうがいいというアドバイスは心に留めておくことにした。
話している間に、昇降口に着いた。岩橋くんは男友達を見つけて、そちらに行った。
岩橋くんが離れたことにホッとする。
靴を履き替え、顔を上げると──視線の先にいたのは、川瀬杏樹。
彼女は目が合うと必ずといっていいほど睨んでくるので、私は息を殺して、気づかれないようにする癖がついてしまった。
杏樹が下駄箱から離れてから動こうと思って、その場に立っていると、驚くことに名前を呼ばれた。
「鈴木さん。おはよう」
「えっ? あ……お、おはよう、ございます……」
小学校時代。水都と絶交した後、私はボスである川瀬杏樹と仲良くやっていこうと思った。いじめられないために。
けれど挨拶をしても、杏樹は挨拶を返してくれない。声が小さくて聞こえないのかと思い、大声で挨拶をした。すると、杏樹は思いっきり顔をしかめた。
「うぜー女。黙れ。あんたのこと嫌い」
それ以降、私は杏樹に挨拶をしない。彼女も挨拶をしてこない。それなのに、どうしたのだろう?
驚きすぎて次の動作に移れずにいると、杏樹はにっこりと笑った。
「教室まで一緒に行かない?」
「え……」
「いつまでもそこにいると邪魔になるよ」
慌てて下駄箱前から離れて、廊下を歩く。隣にいるのは、川瀬杏樹。
水都のことを言われるのだろうと、覚悟する。