キミの隣が好き
 お寿司はおいしいし、両親とは和やかな会話ができているし、店内も落ち着いていて良い雰囲気だ。
 楽しいはずなのに、心はそわそわしている。早く帰りたくてたまらない。
 原因はわかっている。岩橋がメールを送ってきたからだ。

『ゆらりさん、シャンプーしてもらっています』
『気持ちいいって、喜んでいる。超可愛い!!』
『髪型迷ってるから、俺が提案した。もち、俺好みの髪型!』

 食事中にスマホを見るのは厳禁なので、これらのメールは、トイレに行った際に見たもの。
 すっごい、ムカつく!!
 僕だって美容室に行きたかった。ゆらりちゃんがどんな髪型になるのか、一番に見たかった。

 食事を終え、父が支払いをしている間に、急いで岩橋にメールを送る。

『写真を送って!』

 既読はついたのに、返事がこない。
 僕は家に帰ると、モヤモヤを【つぶラン】にぶつけた。

【ん@supenosaurusu・3分前
 あいつムカつく。僕のほうが仲いいし!】
【ん@supenosaurusu・2分前
 絶対に可愛いに決まっている。今までだって可愛かったんだから】
【ん@supenosaurusu・1分前
 心配事ができた。ライバルが増えた】
【ん@supenosaurusu・40秒前
 彼女を幼稚園から知っている。つい最近知った男に負けるわけにはいかない】
【ん@supenosaurusu・30秒前
 僕と彼女は相合傘をした仲】

【ん@supenosaurusu
 いつかはキス】

 途中まで入力して、慌てて削除する。

「願望が漏れるところだった。危ない」

 町田さんは危険だ。心が読めるのでは……と怖くなる。
 告白のタイミングを狙っているし、キスする気満々っていうか……好きな子とキスしたいって思うのは普通だよね?

 
 
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