竜族に生贄として捧げられたはずが、何故か花嫁として溺愛されています!?  ――――青き竜は、不遇な令嬢をひたすら甘やかしたい

生贄の姉と聖女の妹

 広場の中央にある祭壇に向かって、シェイラはうつむきがちに足を進める。一歩踏み出すたびに足首につけられた鈴が小さな音を鳴らし、髪飾りの宝石が触れ合って涼やかな音が響いた。

 うしろには、シェイラが身につけた長いベールの裾を持って付き添う神官が二人。だけど、彼らが本当は神官の服を着た騎士であることをシェイラは知っている。

 見張りなんてつけなくても逃げるわけないのにと思いながら、鈴の音を響かせてまた一歩前に進む。

 普段ほとんど出歩くことがなかったから、この距離を歩くだけでも足が痛い。たっぷりの装飾のせいでいつもよりも重い服も、シェイラの体力を奪っていく。それはもしかしたら、シェイラが逃げ出さないようにするためなのだろうか。

 ゆっくりと時間をかけて祭壇にたどり着いたシェイラは、ベールを脱ぐと膝をついた。やっとここまで来た、と思わず小さく安堵のため息が漏れる。

 吹きつける風に亜麻色の髪が乱れるのにも構わず、シェイラは祈るように両手を組んで目を伏せた。
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