竜族に生贄として捧げられたはずが、何故か花嫁として溺愛されています!?  ――――青き竜は、不遇な令嬢をひたすら甘やかしたい
「ねえ、イーヴ。こっちを向いて」

「注文の多いお嬢さんだな」

 そう言いつつも、イーヴはゆっくりとこちらに向き直ってくれる。なんだかんだいって、彼はシェイラに甘い。だから、少しだけ期待してしまうのだ。子供扱いせずに、ひとりの女性として彼がシェイラを見てくれる日を。



 イーヴの金の瞳に映る自分がなるべく大人っぽく見えるようにと心の中で願いながら、シェイラは小さく首をかしげてイーヴを見つめた。

「あのね、夫婦は寝る前におやすみのキスをするんですよ」

「……そうきたか」

 眉間に皺を寄せたイーヴは、困惑の表情だ。夕方に半ば強引にイーヴの頬に口づけをしたけれど、やっぱり嫌だったのだろうか。自分の気持ちばかり先走って一気に距離を詰めすぎたかもしれないと反省して前言撤回しようとした時、ふわりと頭が撫でられた。

 顔を上げると、苦笑まじりに見下ろすイーヴと目が合った。
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