竜族に生贄として捧げられたはずが、何故か花嫁として溺愛されています!?  ――――青き竜は、不遇な令嬢をひたすら甘やかしたい

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 あの日から、シェイラは毎晩イーヴの部屋で眠っている。ベッドの上での距離は一向に縮まらないけれど、おやすみのキスだけは毎晩もらっている。額に彼の唇が触れるたび、シェイラはとても満たされた心地になる。



「おやすみ、シェイラ」

 だけど優しく触れた唇は、微かな熱を残してあっという間に離れて行ってしまった。もっとしてほしいし、何なら唇にしてくれても構わないのだけど、イーヴにその気はなさそうだ。

 こうしてイーヴにおやすみのキスをしてもらうことは嬉しいけれど、彼の対応はどこか義務的なもの。喜んでいるのは自分だけだということを突きつけられて、少しだけ胸が苦しくなる。イーヴにとってシェイラは、いつまでたっても形だけの花嫁のままだ。



「あのね、イーヴ」

 できる限り身体を離して横になろうとするイーヴを見つめて唇を噛んだあと、シェイラは身体を起こしてイーヴを見上げた。

「どうした?」

「私もイーヴにおやすみのキスをしてもいいですか?」 

「……それは、前に断っただろう。俺は、シェイラに何かをしてもらうつもりはない」

 頑なな様子で首を振るイーヴを見て、シェイラは唇を尖らせた。おやすみのキスはイーヴからだけ。いつだって彼は、シェイラとの関係を変えないようにと分かりやすく線引きをする。どう頑張っても飛び越えさせてくれないその一線が、もどかしくてたまらない。
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