竜族に生贄として捧げられたはずが、何故か花嫁として溺愛されています!?  ――――青き竜は、不遇な令嬢をひたすら甘やかしたい

竜と花嫁

「花、嫁……?」

 呆然として目を見開くだけのシェイラに代わって声をあげたのは、マリエルだった。



 男はシェイラの手を握って、笑みを浮かべる。鋭い目つきが微かに和らぐものの、凄みがあって笑顔のはずなのに怖い。顔立ちは整った部類に入るだろうけれど、冷たく恐ろしい印象の男だ。だけど握られた手は思いがけず温かくて、シェイラは戸惑って視線を揺らすことしかできない。



「花嫁、確かに貰い受けた。竜族は、これからもラグノリアの地を守ろう」

 そう言って男はシェイラの手を引く。よろけるように前に出た身体は、勢いあまって男の腕の中に飛び込んでしまう。こんな風に誰かのぬくもりに包まれることなんて初めてで、頬が熱くなる。まるで男の体温がシェイラに移ったかのようだ。

 竜族は人の姿をとることも知っていたけれど、生贄としてはきっと竜に喰われるのだと思っていた。男の見た目はシェイラと変わらないようだが、彼が喋るたびに口元から牙のような鋭い歯がちらりと見えて、あの歯に噛まれたら痛そうだなと思う。
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