竜族に生贄として捧げられたはずが、何故か花嫁として溺愛されています!?  ――――青き竜は、不遇な令嬢をひたすら甘やかしたい
 ルベリアが来るまでの辛抱だなと言い聞かせて、シェイラは書庫へと向かった。壁一面に本が並んだその部屋は、シェイラのお気に入りの場所のひとつだ。難しくて読めない本も多いけれど、イーヴが綺麗な画集や流行りの本をいくつか買ってくれたので、窓辺にある本棚の一角はシェイラのための場所。

 以前にレジスが用意してくれた一人掛けの椅子に座って、シェイラは膝の上に置いた本を開く。しばらく読み進めてみたものの、どうも集中できない。文字が頭の中に入っていかないのを感じて、シェイラは首を振ると立ち上がった。



 窓の外は少し曇っていて、今にも雨が降り出しそうだ。竜の姿で空を飛んでくるはずのルベリアが濡れないといいのだけどと思いながら、庭を散策しながらルベリアの到着を待つのはどうだろうかと考える。まだ彼女の竜の姿は見たことがないので、シェイラは自分の思いつきに満足する。きっとルベリアは、妖艶で美しい黒竜なのだろう。



 このところ祖父である長の手伝いが増えて忙しいというルベリアとは、久しぶりに会う。雨に降られるかもしれない彼女のために、タオルを用意しておこうと決めて、シェイラはレジスのもとに行くことにした。ついでにイーヴの顔も見られたら、嬉しい。

 本棚に本を戻し、急いで部屋を出ようとしたところで、シェイラは絨毯に足を取られてつまづいた。慌ててそばの本棚に掴まったことで転倒は免れたものの、その衝撃で棚から本が何冊か床に落ちてしまう。

「わ、大変!」

 散らばる本を慌てて拾い集めていたシェイラは、一冊の本の前でぴたりと手を止めた。分厚いその本は、イーヴがいつも読んでいるものとよく似た装丁をしている。だけど、シェイラの視線は本ではなく、本の隙間から飛び出した古い写真に注がれた。
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