竜族に生贄として捧げられたはずが、何故か花嫁として溺愛されています!?  ――――青き竜は、不遇な令嬢をひたすら甘やかしたい
「これ、は」

 震える手で、シェイラはゆっくりと写真を取り出した。

 少し色褪せたその写真に写っていたのは、イーヴと見知らぬ女性。寄り添って立つその姿は、お互いが大切な人であると示しているかのよう。少し緊張したような面持ちのイーヴは、今よりも少し若く見える。儚げな笑みを浮かべた長い黒髪の女性は、シェイラとそう変わらない年頃だろうか。

 ふとここに来てすぐ、イーヴに大切な人はいないのかと聞いたことを思い出す。あの時彼はそんな相手はいないと言ったけれど、誰かを想うような遠い目をしていた。それがこの人なのだろう。まるで隠すように、だけど大切に保管された写真。二人の間に何があったのかは分からないけれど、この人はきっと、イーヴの忘れられない人なのだ。

 イーヴが頑なにシェイラとの関係を進めたがらない理由が、ようやく分かった。だけど、胸が苦しくて息ができない。

「ふ……うっ」

 潰れたような声と共に、涙があふれた。あとからあとからこぼれ落ちる涙は、床に散らばった本の上にもぱたぱたと流れ落ちる。本が濡れてしまうと思うのに、動くことすらできない。

 シェイラは大きくしゃくりあげると、その場にうずくまった。
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