竜族に生贄として捧げられたはずが、何故か花嫁として溺愛されています!?  ――――青き竜は、不遇な令嬢をひたすら甘やかしたい
 どれほどの時間が経ったのだろう。

 シェイラは、ぼんやりと顔を上げた。窓の外は薄暗く、ガラスに雨粒が見える。雨が降り始めたようだ。

 ルベリアにタオルを持って行かなくちゃ、と思うのに、身体が動かない。泣きすぎて頭が痛いし、何だかぼうっとする。

 だけど、涙はまだ止まらない。音もなく頬を流れては、服にいくつもの染みを作っていく。

 結局立ち上がることすらできずに座り込んだままだったシェイラの耳に、ドアの開く音が聞こえた。



「シェイラ……!?」

 ヒールの音を響かせて駆け寄ってきたのはルベリアで、座り込んで涙を流すシェイラを見て驚いたように足を止めた。

「どうしたの、シェイラ。何があったの、どうして泣いてるの」

 おろおろとした表情で、ルベリアは長い指で涙を拭ってくれる。そのぬくもりに、こわばっていた身体がようやく少し動き始めた。シェイラは、緩慢な動きで握りしめた写真を差し出す。



「……これ、見たの」

「なぁに、写真?」

 確認するように眉を顰めて写真を見たルベリアは、小さく息をのんだ。その反応に、彼女もこの女性のことを知っているのだと理解する。イーヴに直接聞くのはさすがに無理だけど、ルベリアになら事情を聞くことはできるだろうか。
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