竜族に生贄として捧げられたはずが、何故か花嫁として溺愛されています!?  ――――青き竜は、不遇な令嬢をひたすら甘やかしたい
「イーヴはほら、ちょっと見た目が怖いでしょう。優しい人であることを親しい人は知ってるけどね、ソフィが竜族を怖がったのは自分のせいだって責めてしまって。きっと今でも、自分を責め続けてるんだと思うわ」

 ため息をついて、ルベリアはカップに残ったお茶を飲み干した。

「イーヴは、ソフィさんのことを好きだったんだね。きっとまだ忘れられないんだ。だから、私のことを受け入れてくれないんだね。……ようやく理由が分かった」

「シェイラ、それは違うわ。イーヴは確かにソフィのことを忘れてはいないけれど、それはあの子のことが好きだからではないわ。救うことができなかった後悔の念が残っているだけよ」

 慌てたようにルベリアが言うけれど、シェイラは目を閉じて首を振った。涙がまたこみ上げてくるのを堪えて、何度か瞬きを繰り返す。

「前にね、イーヴに聞いたことがあるの。誰か好きな人はいないのって。イーヴは優しいからそんなのいないって言ってくれたけど、一瞬言葉に詰まったのを覚えてる。ソフィさんのことを、思い出してたんじゃないかな」

 自分で言葉にしておきながら、胸が苦しくてたまらない。笑ってみせようと思ったけれど、きっと顔は醜く歪んでいる。

「そんな顔しないで、シェイラ。違うのよ」

 ルベリアが抱きしめてくれて、ソフィのことは違うのだと何度も囁いてくれる。だけど、心配してくれているその優しい声はシェイラの耳を通り過ぎて消えていく。

 だって、それ以外に理由なんて思いつかない。優しいけれど、頑なにシェイラを近づけようとしなかったイーヴ。彼の心の中には今もソフィがいたのだから、当然だ。



 花嫁だから、夫婦だからとイーヴに何度も迫ったのが馬鹿みたいだ。彼にとってシェイラは、最初から対象外だったのに。

 優しいイーヴは、シェイラを傷つけないためにソフィのことは黙っていたのだろう。

 この写真をシェイラが見つけなければ、何も知らずにいられただろうかと、シェイラは唇を噛む。

 だけど知ってしまった以上、イーヴが好きだと無邪気に想いを告げることはもうできない。一緒に眠ることだってできない。
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