竜族に生贄として捧げられたはずが、何故か花嫁として溺愛されています!?  ――――青き竜は、不遇な令嬢をひたすら甘やかしたい
「シェイラ……」

 心配そうな声でルベリアが抱きしめてくれる。その柔らかなぬくもりを感じつつも、シェイラはイーヴのぬくもりを思い出していた。少しだけ体温の高い、筋肉に覆われた大きな身体。ほんの数回しかそうされたことはないけれど、すっぽりと包まれるように抱き寄せられるのが好きだったと今更思う。

 もう一度抱きしめてもらいたい。あの大きくてあたたかな手で、頭を撫でてほしい。少し困ったような顔で、だけど笑ってシェイラを見つめるあの金の瞳に映りたい。一緒に空を飛びたい。あの美しい湖のある島に行って、星が映るのを二人で見ようと約束したのに。

 全てが、もう叶わぬ願い。もう、イーヴに触れることだってできない。

 叫びだしたくなるほど悲しい。だけど、シェイラは笑顔を浮かべてルベリアを見上げた。

「ごめんね、ルベリア。もう大丈夫」

「本当に? ごめんね、ソフィのこと、話さない方が良かった」

「ううん、聞けて良かった。教えてもらわなかったら、もやもやしたままだったもの」

 ルベリアを安心させるように、シェイラは必死に笑顔を保つ。今だけでいい、涙が止まるようにと祈りながら。泣いたらルベリアを心配させてしまう。だから、決して泣いてはならない。

 何も気にしていないという表情を浮かべて、シェイラはルベリアの腕を叩いた。
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