竜族に生贄として捧げられたはずが、何故か花嫁として溺愛されています!?  ――――青き竜は、不遇な令嬢をひたすら甘やかしたい

消えたぬくもりと、涙

 夕食の時間になっても、シェイラはベッドから起き上がることができなかった。泣きすぎたせいか、頭どころか全身が重たくて動けない。

 声をかけにきたエルフェには、あまり食欲がないので食事はいらないと毛布越しに伝えた。お菓子を食べすぎたからだという言い訳を、彼女は信じてくれただろうか。

 皆に心配をかけたくない気持ちはあるのに、涙が止まらない。結局シェイラは、毛布に包まって身体を小さく丸めることしかできなかった。



 いつの間にか泣き疲れて眠っていたシェイラの耳に、ドアをノックする音が聞こえた。

「シェイラ?」

 ドアの開く音と同時に声をかけられた瞬間、シェイラは一気に覚醒して身体を硬くする。訪ねてきたのは今一番会いたくない人、イーヴだった。

「食欲がないってエルフェから聞いたけど、大丈夫か?」

 気遣うような優しい声に、また新たな涙がこぼれ落ちる。だけど泣いていることを決して気づかれてはならない。シェイラは、拳を握りしめて耐える。

「ごめんなさい、何だかすごく眠くて。今日はこのまま休みます」

 声が震えないように気をつけながら、シェイラは必死に明るい声を絞り出した。顔を見られていなければ、きっと大丈夫だろう。
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