竜族に生贄として捧げられたはずが、何故か花嫁として溺愛されています!?  ――――青き竜は、不遇な令嬢をひたすら甘やかしたい
 心配させて申し訳ない気持ちになりながらも、シェイラはベッドから動くことができない。もはや笑顔を作ることすら難しくて、かろうじて堪えていた涙も一人になった途端にあふれ出す。

 涙を拭うために手を動かすことすら億劫で、流れた涙はシーツにどんどん染み込んでいく。

 本当は、今すぐにでもイーヴに会いたい。あの手に触れたい。抱きしめてもらいたい。

 形だけではなく、本当の夫婦になりたい。最初は痛いと言われる性行為だって、するならイーヴとがいい。好きな人とするべき行為だと彼は言ったけれど、シェイラがそうしたい相手なんて、イーヴしかいない。

 何も持っていなかったシェイラにたくさんのものをくれた、誰よりも大切な人。

 そんな想いを伝えたら、彼はどんな顔をするだろうか。

 優しいイーヴはきっと、ソフィのことを想っているなんてシェイラに気取らせたりしない。だけど、この想いは決して受け入れてはもらえないだろう。

 最初からシェイラは形だけの花嫁だと、彼はそう言っていたのだから。

 分かりきっていることなのに、胸が張り裂けそうに痛い。苦しくて辛くて、息もできないほどだ。

 大きくしゃくりあげて、シェイラは目を閉じて枕に顔を押しつけた。このまま眠ることができたなら、少しはこの叶わない恋に泣かずにすむのに。

 眠気は一向に訪れないけれど、苦しい現実から逃げるようにシェイラは目蓋の裏の暗闇を見つめ続けた。
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