竜族に生贄として捧げられたはずが、何故か花嫁として溺愛されています!?  ――――青き竜は、不遇な令嬢をひたすら甘やかしたい
 そんなシェイラに気づく様子もなく、男は右手を高く掲げた。指先に青い光が灯り、手を振るとそれは空高く舞い上がって聖女の構築した結界へと吸い込まれていく。

 男の放った光によって、結界が更に強化されたのが分かった。

 これが竜族の保護魔法かと、シェイラは目を見開いた。

 聖女であるマリエルも結界を確認したらしく、ハッとした表情になったあと膝をついて深く頭を下げた。まわりで見守っていた神官らも、同じように頭を下げていく。

 きっとこれでラグノリアは安泰だ。あとはシェイラが喰われるだけ。肉が不味いと言って怒られないといいなと思っていると、ふわりと暖かいものに身体を包まれた。

「空は冷える。着ていろ」

「え? あ……」

 どうやら、男が羽織っていたマントをシェイラに着せかけてくれたらしい。薄手なのにふんわりと温かいのは、彼の体温の名残だろうか。どうせ喰べてしまうのに、何故こんなに優しくしてくれるのだろう。いつ喰われるのか分からない状況が落ち着かなくて、シェイラはうつむいてマントの前をかき合わせた。
< 13 / 202 >

この作品をシェア

pagetop