竜族に生贄として捧げられたはずが、何故か花嫁として溺愛されています!?  ――――青き竜は、不遇な令嬢をひたすら甘やかしたい

あふれるほどの

 ずっと目を閉じていても眠ることができなくて、シェイラは震える吐息を漏らしながら目を開けた。涙でゆがんだ視界に、ぐっしょりと濡れたシーツが目に入る。干上がるほどに泣いた気がするのに、まだ涙は止まらない。涙と一緒にこのままシーツに溶けてしまえばいいと思いながらため息をついていると、部屋の外から大きな足音が聞こえてきた。荒々しいほどのその足音は、まっすぐこの部屋を目指しているようだ。



 何事かと思わず身体を起こした時、部屋のドアが勢いよく開いた。

「シェイラ!」

 同時に響いた声に、シェイラは思わず身体を硬くした。慌てて毛布の中に逃げ込もうとしても怠い身体は思うように動かなくて、走ってくるような勢いでベッドに近づいてきたイーヴに顔を見られてしまう。

「……っ」

 ベッドのそばに膝をついたイーヴとは、ちょうど顔が同じ高さにくる。泣きすぎて顔はぐちゃぐちゃなのにとうつむこうとしたら、あたたかな手が頬に触れてそれを優しく制止した。見上げたイーヴの金の瞳の中に、真っ赤に目を腫らした自分が映っていた。思った通り、酷い顔をしている。こんな形で再び彼の瞳に映りたかったわけではないのに。
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