竜族に生贄として捧げられたはずが、何故か花嫁として溺愛されています!?  ――――青き竜は、不遇な令嬢をひたすら甘やかしたい
 シェイラの顔を確認した瞬間、イーヴは辛そうに顔を歪めた。まるで体温を確かめるように頬を包み込み、指先が目尻に溜まった涙を拭う。こぼれた涙は、頬を伝ってイーヴの手に落ちていった。

「どうした、何があった」

「何も、ないです」

 絞りだした声は、潰れて掠れている。平気だと笑ってみせたいのに、あとからあとからこぼれ落ちる涙が止まらない。

「何もないわけないだろう、そんな顔をして。どこか痛いのか」

「平気、です」

 身体はどこも痛くなんてない。痛いのは、胸の奥だ。だけどこれは、医師に診せたところで治るものではない。

 まっすぐに見つめる金の瞳から逃げるように、シェイラは視線を下げた。
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