竜族に生贄として捧げられたはずが、何故か花嫁として溺愛されています!?  ――――青き竜は、不遇な令嬢をひたすら甘やかしたい
「俺には言えないことなのか。それなら他の……エルフェやルベリアになら話せるか?」

「本当に、何もないんです。ただ、ちょっと疲れちゃっただけ」

 シェイラは、頬に触れるイーヴの手からそっと離れた。これ以上彼のぬくもりを感じていたら、いらぬ言葉を口走りそうだ。なのに、イーヴの手は追いかけるように差し伸べられる。



「心配なんだ。シェイラには、いつも笑っていてほしいのに。その悩みは俺にも――夫にも話せないことか」

 イーヴの口が紡いだ夫という言葉に、シェイラは思わず身体を震わせてしまう。どうせ形だけの夫婦のくせにと捻くれたことを思うものの、見つめる瞳から逃げることができない。

「夫、なんて。……イーヴはそんなこと、思ってもいないでしょう。私は形だけの花嫁だと、イーヴはいつも言っていたじゃない」

 しゃくりあげつつ不安定に揺れた声で告げた言葉に、イーヴが目を見開いた。衝撃を受けたようなその表情に、シェイラは思わず苛立ってしまう。いつも彼が言っていたことなのに。
< 134 / 202 >

この作品をシェア

pagetop