竜族に生贄として捧げられたはずが、何故か花嫁として溺愛されています!?  ――――青き竜は、不遇な令嬢をひたすら甘やかしたい
「シェイラ、それは」

「分かってます。イーヴには忘れられない人がいるんでしょう。それなのに今まで優しくしてくれて、ありがとう。それからごめんなさい。もう、一緒に寝たいなんて、本当の夫婦になりたいなんて、言わないから」

「違う、シェイラ」

 首を振ったイーヴが、シェイラの手を掴む。思わず身体をよじって逃げようとするけれど、そのまま腕の中に抱きしめられた。

「……もしかして、誰かから話を聞いたのか」

 耳元で聞こえる声は、どこか苦しげだ。名前を出さなくても、それがソフィのことを指しているのはシェイラにも分かった。隠していた過去を暴かれ、大切にあたためていた想いを晒されることになって、イーヴに申し訳なくなる。



「写真を、見たの。書庫で、イーヴと……ソフィさんの」

「あぁ、それで。ルベリアが話したのか」

「ううん、私が無理を言ってルベリアから聞き出したの。イーヴは、今もソフィさんのことが忘れられないんでしょう。ごめんなさい、私、イーヴの気持ちも知らずに色々と我儘を言ってしまって」

 もうそんなことはしないからと言おうとした言葉は、さらに強く抱きしめられたことで消えてしまった。
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