竜族に生贄として捧げられたはずが、何故か花嫁として溺愛されています!?  ――――青き竜は、不遇な令嬢をひたすら甘やかしたい
「……イーヴ?」

 掠れた声で呼びかけると、彼はゆっくりと顔を上げた。その表情は、泣き出しそうにも見える。

「シェイラのことを大切に想ってる。だけど、いつかシェイラが離れていく日が来るのが怖いんだ」

 きっとそれは、お互いの寿命の違いのことだろう。およそ千年の時を生きるイーヴから見れば、シェイラはあっという間に年をとってしまう。

 シェイラは、すぐそばにあるイーヴの手にそっと触れた。ぴくりと一瞬震えてこちらを見る彼に、笑みを浮かべてみせる。

「あのね。この先私がどれくらい生きるかは分からないけど、私はその時間をイーヴと一緒に過ごせたらいいなと思ってます。いつかは別れがくることは避けられないけど、最期の時まで、イーヴのそばにいたい」

「シェイラ」

「イーヴのことが、好きなの。私が求めてるのは、家族のぬくもりじゃない。イーヴに、私だけを見てほしいの。私が生きている間だけでいいから、イーヴの時間を私にちょうだい」

 こんなふうに自分の想いを誰かに告げることなんて生まれて初めてで、緊張で声が震える。だけどシェイラは願うようにまっすぐイーヴを見つめた。丸い月のような金の瞳が大きく見開かれ、次いでその表情がぐしゃりと歪む。
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