竜族に生贄として捧げられたはずが、何故か花嫁として溺愛されています!?  ――――青き竜は、不遇な令嬢をひたすら甘やかしたい
「ラグノリアの民に、幸多からんことを」

 男の声と共に、シェイラは強く抱き寄せられた。驚きに小さく悲鳴をあげたものの、次の瞬間には青い竜の背中に乗っていた。

「掴まっていろ」

 竜が、ちらりとシェイラを振り返ってそう言う。その声は先程まで目の前にいた男のものと同じで、この竜が彼であることを教えてくれる。

 恐る恐るたてがみを掴んだシェイラを確認して、竜はすぅっと浮かんだ。まるで別れを告げろとでも言うように広場を一周したあと、空高く飛び上がって地上がみるみるうちに遠くなる。

「お姉様……!」

 微かにマリエルの声が聞こえたような気がして、シェイラは思わず身を乗り出した。

「落ちるぞ」

 短く注意されて、シェイラは慌てて身体を引っ込める。遥か下の方に見える青い光は、マリエルの持った杖だろうか。もう会うことのない妹の幸せを祈って、シェイラはそっと胸に手を当てた。
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