竜族に生贄として捧げられたはずが、何故か花嫁として溺愛されています!?  ――――青き竜は、不遇な令嬢をひたすら甘やかしたい
「あのね、イーヴ」

「シェイラ」

 勇気を出して呼びかけたら、イーヴの声と重なった。改まった口調に、シェイラは思わず姿勢を正す。

「なぁに?」

「これを、もらってくれるか」

 どこか緊張したような面持ちで差し出されたのは、細身のバングル。青く透き通ったその色は、イーヴの鱗によく似ている。

「わぁ、すごく綺麗。もらっていいんですか?」

「できたら、ずっと身に着けていてほしい。これは、俺の鱗から作ったものなんだ」

「やっぱり! そうじゃないかなって思ったの。嬉しい! イーヴの鱗は、本当に綺麗だもん」

「シェイラは、いつも褒めてくれるな」

 照れくさそうに笑いながら、イーヴがバングルを左腕にはめてくれる。光にかざしてそれを確認したシェイラは、嬉しさのあまり目の前のイーヴに抱きついた。

「ありがとう、イーヴ。とっても嬉しい。大切にします」

 耳元で囁くと、彼も嬉しそうに小さく笑った。

「だけど、私はイーヴにもらってばかりで、何も返せないのが申し訳ないです」

「そんなことない。俺はもう、シェイラからは、たくさんのものをもらってる」

 何かあっただろうかと首をかしげるシェイラに、イーヴは笑って指を立てた。

「俺のことも、竜族のことも怖がらずにいてくれて、俺たちを受け入れてくれたこと。何をするにも嬉しそうに笑ってくれること。あぁ、食事を作ってくれたこともあったな」

「それはそうなんだけど、私も何かイーヴにあげたいなって思うの」

 イーヴに褒められて嬉しい気持ちはあるけれど、シェイラだって何かもっと特別なものをイーヴにあげたいと思う。

 だけど、身一つでドレージアに来たシェイラは、イーヴにあげられるものを持っていない。

 何かなかっただろうかと考え込んだシェイラは、思いついた考えに満足して勢いよく顔を上げた。
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